今年最後の「ハナことば」ということで、2018年スポーツ界を振り返りたいと思う。

いろんな場所で今年を振り返るようなものがあるが、毎年恒例の世相を一文字で表す「今年の漢字」なども有名だろう。今年の漢字は「災」。いろいろなことがあったと漢字一文字で理解できる。

時間は平等に過ぎるが、感じ方は人それぞれだったに違いない。私は、年々とても時間が早く過ぎていくと感じる。昨年末「良いお年を」と言って、2018年が始まったのもつい最近のようだ。

ちなみに、今年の漢字で2位に入ったのは「平」。平成最後の年、平昌オリンピック・パラリンピック競技大会、MLBのロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手がア・リーグ最優秀新人選手賞に選ばれたなどのアスリートの活躍から来るものとみられている。

私がレギュラーを持たせていただいているNHKラジオ「Nラジ」でも、私自身で振り返ってみた。私は、この2位に上がった「平」から、スポーツの今年の漢字を考えた。

その一文字は「勢」。

平昌オリンピック。スピードスケートの選手が活躍し、ハーフパイプでは銀メダルに輝いた平野歩夢選手、フィギュアスケートの羽生結弦選手、宇野昌磨選手。モーグルの原大智選手。スキージャンプ競技の高梨沙羅選手、ノルディック複合の渡部暁斗選手。13個のメダルと、1998年長野大会のメダル数を上回る日本人選手の活躍に勇気をもらった。

さらには、サッカーワールドカップロシア大会。コロンビア戦で大迫選手が決勝点を記録して「大迫半端ないって」が流行語となったが、私が心を打たれたのは、セネガル戦で同点ゴールを決めた本田圭佑選手。「ワールドカップがそうさせる」と、ベンチスタートをポジティブに語った姿もベテランの強さを本当に感じた。

グランドスラムを制した大坂なおみ選手の活躍も目立った。それに刺激され、日本で行われた楽天オープンも観戦に行った。テニスを観戦することも、新たな自分自身のデビューでもあった。これまでリオ・パラリンピックで車椅子テニスを見ただけだったからだ。

またインドネシアのジャカルタで行われたアジア大会。ここでも競泳の池江璃花子選手が6冠を達成し、日本スポーツ界の活躍を感じた。

来年は、4年に一度じゃない、一生に一度のラグビーワールドカップ2019がやってくる。さらには、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会。このビッグイベントに出られる選手は世界中の選手のほんの一握りだ。誰が結果を出すかなんて、神のみぞ知る領域だ。でも選手は自分を信じ、努力を続けている。この見えないエナジーが必要だ。

平昌大会のときに感動した言葉があった。

ご自身にとってそのメダルの価値はどのようなものですか?

私は金メダルを獲得した小平奈緒選手に尋ねた。

「これからの自分の人生でその価値は決まると思います」

この言葉を聞いて、心が熱くなった。

たくさんの思いを持ち、このステージに来たのだと思った。

私は現役時代、アテネオリンピックの切符を逃してしまったとき、当時日本水泳連盟の会長であった。古橋廣之進先生に「何のために水泳をやってるんだ? 泳ぐだけなら魚に勝てないぞ。哲学を持て」と言われた言葉がフラッシュバックした。

競技から学んだことが多くあったなと。

スポーツには、人を感動させたりする力がある。

その中でもアスリートの姿、態度、純粋さに私たちは心を動かされてしまう。

今年はいろんなことがあった。

私は頑張っている選手を心から尊敬している。その努力を称賛せずにはいられない。

頑張るアスリートから感じることが大いにあると、あらためて確信した2018年だった。夢に向かい努力するアスリートに刺激されながら、私も決して諦めることなく2019年もスポーツの価値、アスリートの価値を発信していきたい。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)