米国、カナダ、メキシコの3カ国共催となる2026年サッカーワールドカップ(W杯)は、出場国が現行の32から48に大幅に拡大する。出場枠が4.5から一気に倍増するアジアの予選方式が8月1日にアジア・サッカー連盟(AFC)から発表された。

まず18カ国による3次予選で3組各上位2カ国の計6カ国が出場権を獲得。さらに各組3、4位によるプレーオフで2カ国が決まり、残る1カ国が大陸間プレーオフに回る。出場枠は8.5。アジア勢にとって「狭き門」と言われたW杯出場が、随分と楽になった。

サッカーは何が起きるか分からない。それでもW杯常連国の日本の8大会連続出場は確実だろう。その分だけアジア予選の国民の注目度は薄れる。「負ければ監督解任も」などというヒリヒリした緊迫感も、次回は味わえないと思うと少し寂しい。

レベルが高いといえない大陸の出場枠拡大に「本大会の質の低下」を嘆く声は根強い。18年ロシア大会のベスト16のうち14カ国が欧州と南米勢。残る2カ国は日本とメキシコ。確かに26年大会は実力差のある試合は増えるだろう。

ただ長い目で見ると枠の増加は、サッカー人気の世界的拡大とレベル向上につながる。98年W杯フランス大会から出場国が24から32に増えた。アジア枠は2から3に増えた上、予選4位も大陸間プレーオフを争うことになった。その恩恵を受けて、日本は3番目でW杯に初出場した。

その98年フランス大会以降、日本ではサッカーファンの祭典だったW杯が、4年に1度の国民的人気イベントになった。サッカーがより身近にスポーツとして定着した。初めてW杯で“世界標準”と対峙(たいじ)した選手たちは、向上心に火が付いた。世界の猛者の集う欧州にプレーの場を求める選手が急増。それが日本全体のレベルを引き上げた。

97年11月にマレーシアのジョホールバルで、日本がアジア3番目の切符をつかんだ時の歓喜の光景を思い出す。あの“W杯の夢”をより多くの国で分かち合えば、波及効果は世界中に広がる。そして、いずれ8.5枠でもW杯アジア予選突破は楽観できない……そんな時代がやってくるのだと思う。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)

2026年W杯米国・カナダ・メキシコ大会アジア予選方式
2026年W杯米国・カナダ・メキシコ大会アジア予選方式