日本人2人目のNBA選手の誕生が誕生した。メンフィス・グリズリーズと下部チームに所属しながら一定期間昇格が可能なツーウエー契約を結んでいる渡辺雄太(24)が、10月27日(日本時間28日)のサンズ戦に途中出場し、4分31秒間プレーした。04-05年シーズンにサンズの田臥勇太(38)が出場して以来の快挙に、日本バスケットボール界が沸いた。

NBAの舞台にたどり着くまでの支えには、香川・尽誠学園高時代の恩師の言葉があった。「初心、謙虚」。渡辺の胸の中には、今でもこの言葉がベースとしてある。

尽誠学園高の色摩(しかま)拓也監督(45)は、同校入学時に190センチあった渡辺を見て、「身長が高いのに、ハンドリングがうまい。体も細かったので、インサイドでは厳しかったけれど、外ならシュートのうまさも生かせると思った」。当時、渡辺の個人メニューではドリブルを強くつく練習を反復するなど、1つ1つの動作の強度を上げた。色摩監督は、他の高校の監督から「なんで背の高い渡辺をセンターで使わないんだ」と苦言を呈されても、シューターとしての可能性を信じ抜いた。ウインターカップでは2年連続での準優勝。渡辺が高校を卒業する時の色紙に、同監督は「初心、謙虚」と書き記した。

初心忘るべからず、つねに謙虚たれ-。「いろんな方にも助けてもらって、応援してもらっているんだから、初心と謙虚さは持っておいて欲しかった。忘れたらだめだと思ったので」。恩師の思いは渡辺の心にしっかりと届いている。今年9月、グリズリーズで迎えるシーズン開幕に向けて米国に出発する際、大切な言葉を問われると、「初心、謙虚」と即答した。

小学2年の時にテレビで見た元レーカーズのSGコービー・ブライアント(40)に憧れ、「NBAを目指したいと思った」少年が、夢の舞台に立った。それでも渡辺は「まだスタートラインに立っただけ。来年の本契約を勝ち取らないといけない」。恩師の金言を胸に世界最高峰での挑戦は続く。【戸田月菜】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆戸田月菜(とだ・るな)1994年(平6)、福島・白河市生まれ。小学4年から大学までバドミントン一筋。17年入社。バスケットボールなどを担当。