同大が3勝4敗となり、上位3校が獲得できる全国大学選手権出場権を5季ぶりに逃した。

 昨季はエースWTB松井千士(現サントリー)らを擁し、全国4強入り。大学選手権3連覇の歴史を持つ西の名門復活へファンの期待は高まったが、早々のシーズン終了となった。

 13年度に東海大仰星(大阪)の主将として花園優勝へ導いたNO8野中翔平主将(4年)は「チームになるのが遅すぎた」と低迷の原因を分析した。方向性の統一や一体感を感じたタイミングは、11月5日に19-72で京産大に大敗した後だったという。そこで野中は厳しく4年生に訴えた。

 「ここから、3年生以下で試合をした方がええんちゃうか?」

 高校時代はとにかく全員ラグビーにこだわる主将だった。「とことんです。Dチーム(4軍)のたった1人がそっぽ向いていたら、練習を止めた。それすらも許さない空気を作った」。だが、同大に入学して下級生の間に、それでは日本一にたどり着かないとも感じた。「それをしていたら間に合わない。だから、僕はキャプテンになったときに『(勝つために)集まってくれる人全員でやろう。そうじゃない人は切り捨てる』と伝えました」。春は早大との定期戦を28-19で制するなど、一定の結果が出た。だからこそ「地面のボールに飛び込まない仲間がいても、許してしまっていた。今思えば、結果とチーム作りの過程にギャップがあった。目の前のしんどいことから逃げてしまっていた」と後悔が口をつく。

 理想はこうだった。「チームになるのか、チームにするのか。三角形の頂点にいるリーダーだと僕はダメだと思っていて、真ん中でチーム作りをしようと思っていた。(OBの)平尾(誠二)さんも『“俺たちの同志社”と1人1人が言えるチーム』と言っていたのを何かのテレビで見た。『野中のチーム』じゃ嫌だったんです。でも(どちらがいいかを)もっと早く判断して、実行できていれば、もっとラグビーができたかなと思います」。頭に描いた理想と行動のはざまで悩んだ時間を、涙ながらに思い返した。

 関学大と開幕戦で14-21と敗戦。第2節立命大戦の今季初勝利を経て、第3節関大戦では台風接近の大雨の中、後半途中からは自陣からキックを使わずに攻め続けた。展開ラグビーが同大の持ち味とはいえ、関大の鋭いタックルを受け続けて自陣にくぎ付けになる時間が続き、負けた。戦術面でも理想と現実の合間でチームはもがき、開幕3節を終えて1勝2敗と出遅れてしまった。

 この日の天理大戦では、キックを有効に使いながら相手陣でのプレーを意識した。細かなミスなどが重なって敗れはしたものの、前半を7-5でリードして折り返すなど、試合運びは途中までゲームプラン通りだったという。リーグ戦を通して定めきれなかった戦術面については、こう振り返る。

 「『これで勝つんだ』という圧倒できる部分がなかった。(迷ったときに)立ち返る場所があるかないか。(個人の)1対1のところ、セットプレーの部分で自信がなかった。そこで前に出られなかった」

 相手の特徴によって、柔軟に戦術を変えていくことは、勝っていくために必要不可欠。その中で土台となる部分の不安定さが、野中が感じる反省点だった。

 昨季終了後に山神孝志前監督が退任した。萩井新監督就任決定は3月11日と、スピード感を欠いた。重圧がかかる中で就任した萩井監督の下、用意周到でのシーズン開幕とはいかなかった。「学生に申し訳ない」「今年の4年生ともう少し長くやりたかった」。そういった言葉で無念さを示した萩井監督は、最後に今後への光を挙げた。

 「スクラムは非常に良くなった。春は天理さんに3本、スクラムトライを許した。選手の努力は(結果で)出てきている。もちろん、何年かかるか分からないけれど、誰が(スタッフを)やるにしても、そこは強化しないといけないと思っています」

 関西屈指のタレントぞろいと言われるBK陣を擁しても、苦しんだ今季。萩井監督が信念を持ち、春から強化し続けたスクラムは未完成だが、それが野中の言う「立ち返る場所」の芽かもしれない。問題点ばかりを探しがちになるが、その芽を我慢しながら、時間をかけて育てていくことも1つの強化法だろう。「本当は(大学選手権での)経験を(下級生に)残したかった。経験を残して、熱さを残して、4年生の意地を残したかった」と振り返る野中は、試合後のミーティングで4年生に訴えた。

 「学校を去るまでには時間がある。何を残せるのか、考えて行動しよう。俺はキャプテンとして感じたことを、フォローしてくれたみんなはみんなで感じたことを。テクニカル、マネジャー、トレーナー…ってそれぞれの立場で伝えよう」

 全国の舞台を逃した結果は変わらないが、前を向いた。チーム作りで後手に回ってしまった名門に、今度は来季に向けて、たっぷりと時間が与えられた。反省と収穫をどう活用するのか。シーズンが終わっても、栄光を取り戻すための戦いは続いていく。【松本航】