男子は佐藤慧一(けいいち=21、雪印メグミルク)が合計235・5点で優勝を飾った。1回目は最長不倒の94メートルで首位に立つと、2回目は90・5メートルを飛んで逃げ切った。同じ下川ジャンプ少年団出身の98年長野オリンピック(五輪)団体金メダルの岡部孝信コーチ(48)に憧れる179センチの大型ジャンパーは、名門チームで着実に成長を続け、社会人3年目での初Vとなった。

社会人3年目の佐藤がドキドキの初Vだ。1回目に94メートルを飛び、首位で迎えた2回目。最後に飛ぶのはシニアの大会で初めてで「緊張した。力んでしまった」。それでも、90・5メートルでK点越えを2本そろえた。同点2位2人とは1・5点差、飛距離にして1メートル以内の接戦を制した。チーム一真面目な性格といわれ、派手なガッツポーズはなかったが「これまで成績を出せなくて悔しかった。ようやく優勝できてうれしい」と素直な気持ちを口にした。

小学4年から下川ジャンプ少年団で競技を始めた。憧れの選手は同じ少年団出身で、現雪印メグミルクの岡部コーチ。同コーチが当時のワールドカップ(W杯)最年長優勝(38歳4カ月)を達成した09年、佐藤は飛ぶのが楽しくてしょうがない時期だった。「大好きでずっと尊敬している。鋭い飛び出しがすごい」と羨望(せんぼう)のまなざしを向ける。

高校卒業後は、岡部コーチのいる名門に入社。昨季までは2桁順位がほとんどだったが、苦しい時はいつも同コーチから「次の練習はここまで頑張ろう」と前向きな言葉をかけてもらい「一言一言が心に刺さった」。今春は体幹トレで足の裏まで意識してこだわった。今季2戦目の全日本選手権ラージヒル(10月28日、長野・白馬)では、現在W杯遠征中のメンバーも参戦する中で3位。大きな自信を得てシーズンを過ごしている。

次の目標はW杯札幌大会(来年1月26、27日)出場に照準を定める。岡部コーチは「体作りでスピードとパワーがつけば必ず飛べると思っていた。W杯で戦う選手になってほしい」と期待する。目指すは22年北京五輪で「4年後に出るためにもどんどん、ステップアップしたい」。下川ジャンプ少年団のスローガンは「どうせ飛ぶなら世界一」。金メダリストから“下川イズム”を継承する若武者がさらなる高みを目指す。【西塚祐司】

◆佐藤慧一(さとう・けいいち)1997年(平9)7月27日、札幌市生まれ。長沼中央小3年時に下川小に転校。小学4年時に伊藤将充(土屋ホーム)に誘われて、下川ジャンプ少年団に入団。下川中2年時に全国中学2位。下川商高3年時に高校選抜連覇、国体少年の部で優勝。家族は両親と弟。好きな雪印メグミルク製品はカツゲン。血液型AB。179センチ、63キロ。