【アナハイム(米カリフォルニア州)=松本航】女子ショートプログラム(SP)5位から逆転で初優勝した紀平梨花(16=関大KFSC)を支えたのは、年明けからの「スケート漬け」武者修行だった。1月16日に米コロラドへ出発し、現地で10日間の合宿。フリー「ビューティフル・ストーム」を振り付けするトム・ディクソン氏とプログラムを磨きなおし、来季を見すえ4回転ジャンプも特訓した。その内容に迫った。

 

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左手薬指の負傷を乗り越え、紀平は記者会見場で胸をなで下ろした。アクシデントにより、演技自体への意識を持ちにくかった今大会。支えたのは、鍛錬の蓄積であり「米国合宿の成果が結果に表れたと思うので、今まで頑張ってきた自信があったのが良かったと思います」とほほえんだ。

グランプリ(GP)ファイナル初出場初優勝など大躍進の2018年を過ごし、年越し後に向かったのは米コロラドだった。主な目的はフリーの振り付け再考と、来季のプログラム導入を目指す4回転ジャンプの特訓。午前8時にリンクへ到着すると45分×5の氷上練習を行い、夜に貸し切りがある日は60分間の練習を加える徹底ぶり。ダンス、ストレッチなど分刻みの段取りで動き、帰国後は「疲労感がすごくて…。足に全然力が入らない日が3日間あった」と苦笑いするほどだった。

ディクソン氏とは表情、動きの角度など、振り付けを細かく手直しした。中盤のステップは3つのシーンに分けて「1と3はハッピー。2のパートだけ、少しダークなイメージでやろう」と意識を共有。海の波をイメージしながら磨き上げ、今大会を終えた紀平は「まだ思ったようにできない。それでも身についているところはある。世界選手権までに習った通りにやらないといけない」と誓った。

さらに、同時進行で特訓したのが4回転ジャンプ。来季以降の導入を目指し、高地で浮きやすい利点を活用してトーループ、サルコーに取り組んだ。ロシアでは14歳のトルソワらが数種類の4回転を操っており「来季までに完成させたいという気持ちは変わらない。回転が足りない場合なら、降りることはできる」と近い将来の好敵手となるジュニア勢をすでに意識する。

目標は22年北京五輪での金メダル。「息抜きは全くなかったけれど、その分収穫があった」。濃密な時間で見えた伸びしろを、おごることなく追究し続ける。