4大陸選手権初出場で優勝した女子の紀平梨花(16=関大KFSC)が“羽生流”の4回転サルコー習得を目指す。

フリーから一夜明け、来季導入を目指す大技に言及。カナダ・トロントで五輪男子2連覇の羽生結弦(ANA)にジャンプを教えるジスラン・ブリアン・コーチから、今季前に指導を受けた縁で「サルコーはあまり近くで見たことがないので、じっくり観察してみたいなと思います」。羽生とともに出場を予定する3月の世界選手権を心待ちにした。

トリプルアクセル(3回転半)が武器の紀平にとって、羽生は4回転習得へのこれ以上ない教材だ。右足を振り上げて左足で踏み切るサルコーだが、従来の紀平は右足に体重をかけず、ほぼ左足だけで跳ぶイメージだった。だが、ブリアン・コーチが教えるのは右足にも体重をかけ、両足で跳ぶイメージ。羽生のスロー映像を何度も参考にした。当初は回転軸の作り方に苦労の連続だったが「ちょっと慣れてきた。私が変えた後は羽生選手の跳び方。『こういう風に跳べればいい』というイメージがある」。1月の米コロラド合宿でも感触が良くなってきた。

今月末からは浜田美栄コーチと、再びコロラドを訪問。ロシアのジュニア勢による来季のシニア参戦も頭に、高地の利点を生かしてさらに精度を上げていく。これまで重点的に取り組んでいたのは、最も基礎点が低いトーループだったが「今の時点ではサルコーの方が安定している気がする」。合宿後の世界選手権は、ピョンチャン・オリンピック(平昌五輪)金メダルを引き寄せた羽生の4回転サルコーを生で見る貴重な機会だ。

この日午前は母実香さん(47)、トレーナーと現地のイタリア料理店を訪れてプチ祝勝会。気分転換を終え「完璧な演技をしたい」と3月の大舞台を見据えた。シニア1年目の世界女王を目指す先には、目標の22年北京オリンピック(五輪)金メダルがある。世界屈指の技術は、その道しるべとなるはずだ。

◆女子の4回転ジャンプ 02年ジュニアGPファイナルで安藤美姫が4回転サルコーを世界初成功。以後は成功者は現れていなかったが、昨年3月の世界ジュニア選手権で当時13歳だったトルソワ(ロシア)が史上初のトーループ成功。一気にサルコーとの2種類を決め、10月のジュニアGP第7戦アルメニア大会ではルッツも決めた。12月のロシア選手権では国際スケート連盟非公認ながら、14歳シェルバコワが4回転ルッツを決め、平昌五輪金メダルのザギトワらを抑えて優勝。両者は来季、シニア転向が可能な年齢(6月30日時点で15歳)に達する。