東京オリンピック(五輪)予選を兼ねた新体操世界選手権の団体総合で44年ぶり銀メダルを獲得し、さらに団体種目別のボールで金メダル、フープ・クラブでは銀メダルを獲得した日本代表が24日、成田空港に帰国した。山崎浩子強化本部長(59)「今回のメダルは目標にしていたが予想以上。見ていて全く不安がなく、ゾーンに入っていた」と語った。

東京五輪出場枠を自力でつかんだ団体総合では、昨年からDスコア(演技価値点)の上限がなくなり、難度の高い技を多く取り入れた。その中でしっかりと完成度を求め、高得点をマーク。最後でロシアにかわされ銀メダルに終わったが山崎強化部長は「今回ロシアに肉薄し、危ないなと思っているはず。他のチームは崩れる中で。あれだけ作品を4つともしっかりやり切ったのは、日本とブルガリアぐらい」と評価した上で「全チームがミスなくやったら日本はメダル圏内にはない。もっと技を取り入れてしっかりやり切らないと」と課題を述べた。

7月に「メンバーへの厳しさが足りない」と杉本早裕吏(23=みなみ新体操クラブ)を主将から外した。杉本は「ショックで言葉が出なかった」と落ち込んだが、チームに影響を及ぼし崩れ始めた。自分自身を見つめ直し「自分が落ちたらダメ」と改め、コーチ、チームメート全員の前で「もう1度主将をやらせて下さい」と直談判。自覚がより一層強くなり団結力が増した。杉本は「覚悟を持ってやらせてもらった」と3個のメダル獲得につなげた。

さらに結果を残した背景には山口留奈コーチ(27)の存在も大きかった。普段の軟らかい表情からは想像つきにくいが、選手は口をそろえて「厳しい指導」と話す。山口コーチは「たくさん厳しいことも言ったが、終わってから後悔の涙を流しても仕方ない。練習の時につらい思いをしても最後に笑えれば全て報われる」。その通りの結果に優しい笑顔で語った。山崎強化本部長も「自分たちで厳しくするのには限界がある中、しっかりと選手を引き上げてくれた」と目を細めた。

W杯などで好成績を残すようになり、今回のメダル獲得で東京五輪での表彰台も見えてきた。山崎強化本部長は「最初はワールドカップシリーズで勝っても、何で? って感じだったが、最近では、メダルを獲得するチームという認識は持ってもらっている。あうんの呼吸という部分は日本人は得意」と手応えを感じた。団体種目別ボールでは史上初の金メダルも獲得。杉本は「メダルを取ったからこそ、てんぐにならずに謙虚に上を目指したい」と力強く語った。団結力の増した「フェアリージャパン」は東京五輪金メダルまで油断することなく突き進む。【松熊洋介】