IBMのK佐藤敏基(26)が日本最長タイ記録の58ヤードFGを決めた。東京ガスとの今季最終戦で、前半最後のプレーで右足を振り抜いて成功させた。58ヤードは88年のオンワード川上、00年のマイカル山口に並んで3人目。NFL入りを目指している佐藤は、来年も挑戦へいい弾みと実績になると大喜びだった。

IBMはここまで2勝4敗と低迷し、これが今季最終戦だった。佐藤は「長いのを蹴らせてくれと、チーム内でずっとアピールしていた」という。願いは通じて思わぬチャンスがきた。東京ガスが前半残り9秒でパントを蹴り、IBMに攻撃権が移った。残り3秒でFGチャンスになった。

パントリターンの際に反則をとられて、ボールは敵陣41ヤードに置かれた。実際にボールを蹴るのは、スナップされたボールをホルダーが置く7ヤード後ろ。エンドゾーンの10ヤードを加えて58ヤード。東京ガスがタイムアウトをとって間を作ったが、佐藤は逆に気持ちを落ち着かせた。

蹴り上げたボールは高い放物線を描き、黄色いゴールのバーを越えた。佐藤は何度も何度もジャンプして喜びを表現した。第2Q11分20秒にも42ヤードFGを決めていた。この時期では冷え込んだナイターとなったが、TFPも3本とすべて成功させた。9得点をマークし、45-7で今季3勝目で最終戦勝利に貢献した。

自己最長記録は早大2年時の13年に、春の早慶対校戦でマークした55ヤードだった。早大4年時の15年には、大学日本一を決める甲子園ボウルで苦い思い出がある。立命大に1点リードされて、残り3秒から52ヤードの逆転FGを狙った。蹴ったボールは立命大DLにチップされた。キックは短く失敗となり、早大の悲願の日本一はならなかった。

卒業して不動産会社に就職し、IBMでプレーは続けた。その夏にクリニックに参加すると、来日した米国人コーチから「プロを目指してみないか」と誘われた。一念発起して会社を辞め、NFL挑戦の道を選んだ。17年から米国で指導を受け、トライアウトやコンバインに参加して、チャンスを狙っている。

佐藤は「体が続く限り挑戦していきたい。公式戦で記録したことは大きい。アピールする材料になる」と笑みが絶えなかった。現在は早大でコーチも務める。今季は2年連続6度目の関東制覇で、甲子園ボウル出場も見えてきた。初の日本一を狙う後輩を後押し、来年には再び米国でチャレンジする。