02年以来、18年ぶりの日本一を目指した学生王者関学大が14-38で社会人王者富士通に敗れた。

今季限りで勇退する鳥内秀晃監督(61)のラストゲーム。RB三宅昂輝(3年)の64ヤードのTDランに始まり、QB奥野耕世(3年)がTDパスを決めるなど、相手を慌てさせる場面もつくった。富士通はオービックに並ぶ最多4連覇で通算5度目V。社会人11連勝となり、学生との通算対戦成績は25勝12敗。最優秀選手には富士通のQB高木翼(27)が選ばれた。

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前半から社会人王者に圧倒された。だが、0-21と離された第2クオーター(Q)、RB三宅が意地の64ヤードTDランを決めた。さらに、7-38の第4Qには、QB奥野が4ヤードからWR鈴木海斗(3年)にパスを通しチームとしてこの日、2TD目を奪った。最後は残り時間5秒。1ヤードから三宅が足でTDを狙うも届かず。2年連続で同じ相手に敗れはしたが、学生王者の実力を見せた。

鳥内監督は、普段から選手に「どんな男になんねん?」と問いかけ、選手自身に答えを導き出すように促してきた。奥野は昨年2月の面談で、その問いに「日本一に導けるQBになる」と宣言。連日、ライバル立命大の映像を見て研究してきた。体重も前年より7キロ増量しパワーをつけた。

一昨年、日大の悪質タックル事件で被害者になった奥野にとって、指揮官最後の試合への思いは格別だった。「アメフトだけじゃなく、人として当たり前のことを当たり前にすることを学んだ。人としてどんな人間なるのか、下級生に伝えていきたい」とその精神を受け継ぐ覚悟を示した。

普段は選手に「なめとる」辛口の名将だが、タックル事件で奥野が全治3週間のケガを負うと「汚いプレーはフットボールではない」と痛烈批判。だが、謝罪した加害選手の誠意に触れ「私としては(競技を)続けてほしい」と口にした。

甲子園ボウル優勝12度、02年には関学大史上唯一となるライスボウル優勝を果たした。試合が終わって「ホッとしている。もう何も考えなくていい。重要なところでミス、反則があるのは甘い。うちは期待されるチーム。注目されれば、まだ伸びる。まだまだ上を目指してやっていけば良くなる」。指揮官としてラストでも、教え子を思う愛に終わりはない。【南谷竜則】