やらかした男が、やりきった。準決勝で痛恨0点を出した須山晴貴(21=島根大)が、会心の演技で東京オリンピック(五輪)に王手をかけた。

6本すべて70点以上で自己ベストの462・30点。昨夏の世界選手権5位相当のスコアで1位となって、五輪世界最終予選を兼ねたワールドカップ(W杯)東京大会(4月21~26日、東京アクアティクスセンター)への出場を決めた。これまで勝負どころで大失敗もしてきた21歳が、東京切符を懸けて世界と勝負する。

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須山は、2日前の光景が頭に浮かんだ。6日の準決勝でぽちゃんと落ちて0点を出した2本目。「なんかフワフワしたけど…。練習通りと思って跳んだ」。しっかりと成功して波にのった。最後の6本目を終えるとド派手に両腕を突き上げた。「この半年、頑張ったな、スコアを見ていったなと思った」と目を細めた。

高難度の技を並べてぎりぎりを攻める。高得点を狙えるが、大失敗のリスクもある。「周囲から『やらかす人』と言われる。へへへ。これまで『お前はやらかすからな』と言われてきた」。準決勝の0点だけではない。昨年4月の日本室内選手権では寺内、坂井を抑えてトップで迎えた最後の6本目に大失敗。2人に抜かれて世界切符を逃した。

「やっぱり心が弱かった。五輪にいきたいと口ではナンボでもいえるけど、覚悟が足りてなかった」。昨秋に休学して競技一本に絞った。全国の指導者に教えを乞い、韓国、オーストラリアにも遠征した。

W杯東京大会で準決勝進出の18位以内に入れば代表に内定する。その目安は432・90点で、この日は約30点も上回っている。「東京五輪は一生に1度。その景色を見てみたい。まあ僕は全然無名ですし、チャレンジャーです」と軽やかに笑っていた。【益田一弘】

◆須山晴貴(すやま・はるき)1998年(平10)3月9日生まれ、島根県松江市出身。小3から競技を始める。松徳学院高-島根大。12年世界ジュニア選手権で8位入賞。19年ユニバーシアード大会代表。家族は両親と姉2人。好きなものはアニメ、車、つけ麺。特技は書道。175センチ、75キロ。