カップルとして初出場だった村元哉中(かな、29)、高橋大輔(36)組(関大KFSC)が、演技に悔しさをにじませた。リズムダンス(RD)15位で迎えたFDは96・48点にとどまり、合計164・25点で16位となった。自己ベストには25・91点届かず、村元は「練習ではしないミスが出てしまう。試合が終わって、これだけ悔しい思いをしたのは初めてです」と素直な感情をにじませた。

2季目のFD「ラ・バヤデール」。序盤は順調だったが、中盤のローテーショナルリフトが乱れた。レベルが取れず、1つの要素でわずか0・94点。歯車が狂い、そこからもミスがあった。高橋は「今シーズンもいろいろな経験ができたけれど、まだまだ時間が足りなかった。悔しい部分と、仕方がないような部分と、言葉では表現しにくい」と複雑な心境をのぞかせた。

高橋はシングルから転向し、ゼロから土台を築き上げた。それでも「かなだい」は北京五輪(オリンピック)出場を目標に掲げ、1つ1つ壁を乗り越えてきた。五輪は惜しくもかなわなかったが、高橋はシングル時代以来9年ぶり、村元は4年ぶりの世界選手権で、現在地を知った。世界最高峰の舞台での学びを、高橋はしみじみと言葉にした。

「世界のトップを肌で、間近で感じたこの世界選手権は、本当に自分にとって改めてすごくいい経験になりました。最後はちょっと思い描く、いい形で締めくくれなかったかもしれないですけれど、これまでの経験といったものは、自分たちにとってはすごく大きな、素晴らしい経験だったんじゃないかなと思います」

9度目の世界選手権には、過去8度とはまた違う尊い価値があった。(モンペリエ=松本航)