フェンシング男女エペ日本代表の沖縄合宿(6月18~25日)が、レジャー中心ながら日本オリンピック委員会(JOC)などの助成金から補助を受ける予定だったと週刊文春に報じられた件について、日本協会が2日の理事会で協議した。

究明を約束していたタレントの武井壮会長(49)が都内で囲み取材に応じ、助成金203万2905円(15人分)の申請の見送りを決議したと報告。選手とコーチの家族計4人が同行していたことについては「不適切だった」と謝罪した。

ただし、長期遠征の合間のリフレッシュ目的だったとして、合宿内容自体には「最初に抱いた印象とは違う。単なる遊びではなかった」と理解を示した。理事会としても「合宿の内容そのものは不適切ではなかった」との見解をまとめた。

参加した全29人の聴き取りを終えた協会によると、事前の計画と実際の内容が異なっており、コーチから強化本部に変更が報告されていなかったという。武井会長はその点を問題視しつつ、自身も選手ら3人に直接ヒアリング。世界選手権(15日開幕、エジプト)への調整だったと確認した。

エペ陣は今年2月、ウクライナに侵攻したロシアのカザンで合宿しており、出国後も遠征が長期化。さらに4~5月はジョージアなどを転戦。6月はアジア選手権(韓国)があり「世界選手権まで3週間。心身が削られるロシア滞在もあった後、心身のストレス緩和が必要だった」と認めた。「朝はヨガ、午前はフェンシングやフットワークをして午後は自由時間。練習してもレクリエーションに出掛けても休んでもいいことになっていた。調査の後、最初の(不適切だという)印象とは差があったなと。(週刊誌の問い合わせに)正しく回答する準備がなかった運用面は問題だが、今はレジャー、バカンスという印象はない」と、ネット上の批判でサンドバッグ状態だった選手をかばった。

合宿中に毎朝、行っていたヨガも強度が高かったといい、武井会長は「休養と調整が必要な状態だった。世界選手権に向けた最初の1週目としてはリフレッシュが必要。私自身、アスリートの経験としても分かるし、話をした選手からも『しっかり練習をしていた』と涙ながらに聞いた」とした。他方で「とはいえ、我々アスリート側の考えと国民の皆さまとの感覚にはギャップがあるのは事実」と断ることも忘れなかった。

フルーレの女性コーチがエペの合宿に参加していたことには「広報スタッフとして派遣した。彼女は当該合宿後のサーブルの福岡合宿にも行っている」と正当性を主張。男子選手との関係についても「不適切なことは絶対になかったと。自分が(会長として)否定した後、二の矢が報じられると大変なことになるが? と確認したが、大丈夫とのことだった」とも語った。

同行家族に関しては、ゴルバチュク・コーチの夫人と娘、女子選手の未就学男児だったと報告。渡航費は私費だったが、同室だったため自己負担に修正した。同コーチはウクライナ人で家族はハルキウ在住。戦禍を逃れ、ドイツへの避難をへて来日していた。同情できる面もあり関係者の処分はしないが「不適切だったことに間違いはない。そこは謝罪いたします」と頭を下げた。JOCと日本スポーツ振興センター(JSC)に200万円超の助成金を申請しなかった。協会が代わって負担するという。

合宿に問題ないのであれば助成金を一部申請しても良いのでは、との質問には「本来は申請しても恥ずべき内容ではないが、一部では不適切な部分があったので」と強調し「あのような(ビーチやプールで楽しむ)写真が出てしまうと」とも吐露した。スポーツ団体と、公金を負担する国民感情との隔たりに配慮。見送った上、今後の申請基準を自主的に上げる改善策の構築を約束した。【木下淳】