ロシア出身で、世界23位のエレーナ・ルバキナ(23=カザフスタン)が、ロシア選手が閉め出されている大会で、カザフスタン選手として史上初の4大大会決勝進出を決めた。

2度の4大大会優勝を誇る元女王、同18位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)に6-3、6-3のストレート勝ち。決勝では、68年オープン化(プロ解禁)以降、アフリカ勢初の4大大会決勝進出となった同2位のジャブール(チュニジア)と対戦する。

ウィンブルドンで、過去本戦出場は21年1回戦敗退のただ1度。テニスの聖地と言われるセンターコートも人生初の経験だったルバキナが、元女王を圧倒した。「素晴らしい試合だった。準備をしっかりできた」と、マッチポイントでバックを決め、小さくガッツポーズだ。

今年は、主催者であるオールイングランド・ローンテニスクラブ(AELTC)が、ウクライナに侵攻したロシアと、それを支援したベラルーシの選手の出場を認めない異例の大会となった。その中、ロシア・モスクワ生まれのルバキナの決勝進出は意味深だ。

ルバキナは、17年、ジュニア世界3位にまでなったロシアの有望選手だった。しかし、「なかなか支援に恵まれなかった」ことで、ジュニアを卒業する時点で、奨学金をもらって、米国の大学でプレーすることも考えた。

そこに手を差し伸べたのがカザフスタン・テニス連盟だ。「お互いを見つけることができた最高のタイミングだった」。18年、ルバキナはロシアからカザフスタンに国籍を変え、19年にブカレストでツアー初優勝。今年1月に自己最高の12位となった。

カザフスタンは、大統領の顧問も務めたこともある政治家で大富豪のウテムラトフ氏が、07年にテニス連盟の会長に就任。石油産出国のオイルマネーを背景に、ロシア選手をカザフスタンに引き抜いた。

女子で、3度の4大大会8強、同33位のプチンツェワは12年に、男子で同38位のブブリクは16年に、ロシアからカザフスタンに国籍を変更している。このことについて、ルバキナは「難しい問題」としながらも、「わたしはロシアで生まれたけど、今はカザフスタン代表。とても幸せ」と、胸を張った。

ただ、ルバキナの思いとは別に、ロシアは、彼女の活躍を利用しようとしていると言われる。それは、最もウィンブルドンが恐れていた問題だ。ルバキナは「生まれる場所を誰も選べない。誰もがここでプレーしたかったはず。戦争が早く終わることを祈っている」と、自分の出自が利用されることなど願っていない。

◆ウィンブルドンテニスは、6月27日から7月10日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドで最大10コートがライブ配信される。