ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(25=クラレ)が、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪挑戦を明言した。28日、北海道・士別市内で行われた「クラレ高梨沙羅杯ジュニアサマージャンプ朝日大会」で、現役続行表明後、初めて取材に応じた。北京五輪で失意を味わった日本の女王は、4年後に向けた再出発へ、決意を新たにした。

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涙に暮れた姿は、もうない。高梨自身の冠大会に出場したジュニア選手たちと笑顔で交流する姿があった。北京五輪後、国内で公の場に登場したのは初めて。W杯ジャンプ最多63勝を誇る25歳は「自分の五輪の失敗というか、やってしまったことは、五輪じゃないと消化できない気がしている」と、4年後を見据えた。

あれから5カ月がたった。2月7日の北京五輪混合団体では、1回目にスーツ規定違反により失格した。責任感から泣きじゃくり、ぼうぜん自失。大きなショックを受け、3月のシーズン終了の際には、進退についての明言を避けた。今後について決めきれないまま、5月に秋田・鹿角でジャンプ練習を再開。わいてきたのは、純粋にジャンプが好きという気持ちだった。「ここで締めくくりきれない。まだまだそこで終わっちゃいけないような感じがした」。6月に自身のインスタグラムで現役続行を表明した。

4度目の五輪でリベンジする。これまでの女子はノーマルヒルと混合団体の2種目だった。2大会連続のメダルを狙った北京大会ではともに4位。だが26年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会から、ラージヒルが追加される。「すごく喜ばしいこと。チャンスが増える」と歓迎した。「4年後に向けて日本チームの力になれるように」と誓う。

競技への向き合い方に変化があった。練習で「今まで作業的にやっていたが、楽しさを感じた」と喜ぶ。平昌五輪からの4年間は、新たなスタイルを作り上げるため、ジャンプを一から変えて取り組んだ。試行錯誤する中で苦しさもあった。今また模索の日々を過ごしているが「いろいろ試していくことが楽しい作業」と、前向きだ。

新たなスタートを切ったが、根底は変わらない。「こうしてジャンプを飛ばさせていただいているのも、たくさんの方の支えのおかげ」と感謝する。今季のビッグイベントは23年2月開幕の世界選手権(スロベニア)。「たくさんの人に何かを感じてもらえるようなパフォーマンスをしたい。そこを目指していきたい」。挫折を経てたくましさが増した高梨は、これからも世界中を魅了するジャンプを見せ続ける。【保坂果那】

<高梨沙羅の昨季アラカルト>

◆1月1日 W杯個人第9戦(スロベニア・リュブノ)でシーズン初勝利を挙げた。通算61勝目。

◆2月5日 北京五輪女子で4位だった。1回目98・5メートルで5位から、2回目100メートルで順位を1つ上げた。

◆同7日 北京五輪混合団体で高梨、佐藤幸椰、伊藤有希、小林陵侑で臨んだ日本は4位だった。1番手の高梨が1回目の飛躍後、スーツ規定違反による失格となり、その分の得点が無効となった。

◆同8日 自身のインスタグラムに真っ黒な画像とともに謝罪文を投稿。「謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります」と引退の可能性も示唆した。

◆3月2日 W杯個人第14戦(ノルウェー・リレハンメル)で北京五輪以来の実戦復帰を果たし、優勝を果たした。通算62勝目。

◆同13日 W杯シーズン最終戦の個人第19戦(ドイツ・オーベルホフ)は7位で、個人総合は5位でフィニッシュした。試合後「今後のことについてはまだこの場では明確な答えを出せていないのが現状ですが、よくよく考えて次向かうべきところを目指していきたい」と話し、進退についての明言を避けた。

◆6月17日 インスタグラムで現役続行を表明した。「今後のことについてはまだこの場では明確な答えを出せていないのが現状ですが、よくよく考えて次向かうべきところを目指していきたい」とつづった。

◆北京五輪混合団体 1番手の高梨は103メートルを飛ぶも、スーツ規定違反による失格となった。飛躍後の無作為の検査で、太ももまわりのスーツのサイズが規定より左右2センチずつ大きいと指摘された。日本は高梨をのぞく3選手分の得点で8位と2回目進出を決め、アンカー小林陵侑の106メートルの大飛躍もあり、4位まで浮上した。ドイツほか女子5選手が失格となる波乱の展開となった。