元職員の横領の組織的隠蔽(いんぺい)が問題となっている日本バドミントン協会に、選手が声を上げ始めている。13日に東京五輪日本代表の奥原希望が、ツイッターに「これ以上関係者を失望させないでほしい」と発信。14日には同代表の園田啓悟も、インスタグラムで「こんなことは、絶対ダメ」など訴えた。

プロ選手として活動する三枝力起(みえだ・りき、27=アートホーム)も、奥原のツイートとほぼ同じタイミングで投稿し、危機感を示した。その三枝が15日、日刊スポーツの取材に応じ、選手として胸の内を明かした。

   ◇   ◇   ◇

発言によるリスクがあることは承知していた。それでも競技を愛するプレーヤーとして、そしてプロ選手として、声を上げずにはいられなかった。三枝は13日夜、「企業やスポンサーにとって『バドミントン』というスポーツが悪いイメージになってしまい競技を続けられなくなる。それが本当に選手のためなのか…」とツイート。選手の立場から、日本協会に疑問の声を投げかけた。

投稿ボタンを押すまではためらいもあった。「僕が発言することで、悪い方向に行ってしまわないか。そのリスクの存在は感じていた。やっぱり迷いはあったし、不安もありました」。サポートしてくれるスポンサーに迷惑を掛けたくはなかった。他の選手たちに悪い影響を与えたくもなかった。

それでも勇気を持って行動に踏み切ったのは、プロ選手としての自覚からだった。実業団チームには所属せず、スポンサーからの支援を受けて活動する三枝のようなアスリートは、日本バドミントン界ではほんの一握り。競技を続けられる感謝を日頃から感じているからこそ、責任説明を果たそうとしない日本協会に対して黙ってはいられなかった。

「僕らができるのは、世間にもっと知ってもらおうとすること。この件に関する世の中の関心度を高められれば、(説明責任から)逃げられなくなる。やっぱり僕らはバドミントンを好きだし、バドミントンが批判されるのはすごく嫌。今回の件をきっかけに、風通しのよい協会になってほしいと願っています」

19年北海道選手権男子シングルス優勝などの実績を持つ三枝は、さらに成績を上げて日本のトップを目指そうとする立場。日本代表選手ではないが、だからこそ影響力の高い国内トップ選手の発言に期待する思いを抱く。

「やっぱり代表選手に発言してほしいという思いはあります。僕たちよりも協会との距離が近い分、簡単には声を出しづらい面はあるかもしれない。でも、トップ選手たちがどんな気持ちでいるのかを知りたいのは、僕だけではないはず」。

くしくも同じタイミングで声を上げた奥原は同い年。三枝自身も発言に至るまで迷いを持っていただけに、奥原が取った行動の重みを理解する。

「すごい勇気があると感じた。発信力と影響力がある選手が、あのような発言をしてくれる意義は大きい。同じアスリートとして尊敬する」

三枝自身が投稿したツイートへの反響も、もちろん大きかった。なかには否定的なダイレクトメッセージもあったが、それよりも賛同や共感を示す意見のほうがはるかに多かった。

「不安はあったけれど、今はツイートして良かったと思っています」

17日にはスポーツ庁や日本オリンピック協会など5団体のトップによる会議が開かれ、国からの強化費が2割削減されることが決まった。審査によってガバナンス(組織の管理体制)が不十分とみなされれば、交付金がゼロになる可能性すらある。来年からは24年パリ五輪選考レースが始まる中で、国内合宿や海外遠征費に大きな影響が出ることが濃厚だ。

黙っていては状況は悪化するばかり。自らのため、そして将来のバドミントン界のためにも、選手たちはいまこそ自分の思いを発信するときだ。【奥岡幹浩】

◆三枝力起(みえだ・りき) 1995年1月17日生まれ、北海道出身。兄の影響で小学4年からバドミントンを始める。札幌第一高から青学大に進み、国内最高峰S/Jリーグのコンサドーレ加入。20年11月に退団し、21年より北海道の建築業社アートホームと所属契約を結んだ。フィジカルの強さを生かしたプレーが持ち味。19年北海道選手権男子シングルス優勝。身長178センチ、体重68キロ