シングルとの“二刀流”で注目の新星「はるすみ」ことジュニアの村上遥奈(はるな=14)森口澄士(すみただ=20)組(木下アカデミー)が初優勝した。

107・86点で、ショートプログラム(SP)54・21点との合計162・07点をマーク。国際スケート連盟(ISU)非公認の国内大会ながら、全て自己ベストをマークした。

ジュニアから推薦出場。今季グランプリ(GP)ファイナル王者の「りくりゅう」こと三浦璃来(21)木原龍一(30)組が帰国便トラブルで欠場した中、唯一リンクに上がり、憧れの存在に直接、胸は借りられなくとも、自分たちに集中してノーミスの演技を披露。優勝ペアに名を刻んだ。

村上「このような大きな大会で優勝することができて、とてもいい経験になりました。学べたものを、これから生かしていければ」

森口「いつか大きな舞台で金メダルを取れる組になりたいと思っているので、あらためて、その思いが強くなりました。さらに練習に励めそうです」

村上は前夜の女子フリーにもジュニアからの推薦で出場して17位。「悔しい思いをしたんですけど、どう疲れを取るか切り替えました」と沈む暇などなく、一夜明けた午前のペア練習から参加した。

2日前の男子SPで10位と好位置につけた森口も、この日はペア、男子の公式練習に出てからペアの本番を迎えた。

冒頭は2回転ツイストリフトから入り、2人でタイミングを合わせて同時に跳ぶサイド・バイ・サイドの3回転ルッツに成功。リフトの後、最大の見せ場が訪れた。ともにシングル選手だけに、ジャンプは、世界の列強ペアと渡り合える高難度が跳べる。3連続ジャンプは3回転サルコー-3回転トーループ-ダブルアクセル(2回転半)だ。きっちり伸ばした足まで合わせて会場を沸かせ「ジャンプは得意なので自信を持って跳べています」と声をそろえた。

その後もスロー(男子が投げた女子が降りる)2回転サルコー、フリップも着氷。最後のペアコンボスピンも最高評価のレベル4を獲得した。

反対に、ペア特有の動きでは改善点も多い。「ツイストは3回転にしたいし、スロージャンプ、ユニゾン(2人の調和)やデススパイラルの質を上げていきたい」(森口)。ノーミスでも、より高い技術を習得していきたい思いがある。その十分な伸びしろもファンを楽しませ、村上は「こんなにたくさんの方に見られて演技するのは初めて。緊張したけど、いい経験になりました」と感謝した。

全日本ジュニア選手権の優勝組として、来年2月に開幕する世界ジュニア選手権(カナダ・カルガリー)への出場が内定している。今月上旬のジュニアGPファイナルは4位。恐れることなく表彰台を目指す。

一方、今季限りで1度はペア関係を解消する必要がある。世界ジュニアまでは戦えるが、来季は森口がペアのジュニア年齢20歳を超えてしまい、シニアとジュニアのままの村上とカテゴリーが分かれてしまうため3シーズンはペアを組めない。

ルールには従うしかなく再び結成できるのは26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪(オリンピック)後の2026-27年シーズンからだ。30年の冬季五輪や世界選手権という大舞台を目指すことになる。森口は「3年間は出られないですけど、その間、しっかりトレーニングはして、大きな大会で戦う準備をしていきたい」と力を込めた。

3年後も同じ2人で? そう確かめられると、再び声を合わせた。

「はい!」

今季結成も、当面は「はるすみ」として出られなくなる全日本。その意味でも思い出の初出場Vとなったが、余韻に浸る暇はない。森口は表彰式の後、もう出番まで4時間を切っていた男子フリーへ「難しいことをやっている中で、あと1つ、どう乗り切るか」。そう言い残し全日本の最終種目へ向かった。【木下淳】