ショートプログラム(SP)首位の「りくりゅう」こと三浦璃来(21)木原龍一(30)組(木下グループ)が、男女も含めて日本勢初となる「年間グランドスラム」を達成した。

SPで自己ベストかつ今季世界最高の80.72点を記録し、前回王者の2位クニエリム、フレイジャー組(米国)に6.08点差をつけた。迎えたフリーこそ全体2位だったものの、こちらも自己ベストの141.44点。合計も初の220点オーバーとなる自己最高の222.16点でリードを守って、日本ペア初の頂点に立った。昨年12月のグランプリ(GP)ファイナル、先月の4大陸選手権と合わせた「年間グランドスラム」を完成させた。

フリーでは冒頭の3回転ツイストを決め、今年に入って解禁した新3連続ジャンプの3回転トーループ-2回転トーループ-ダブルアクセル(2回転半)も着氷。終盤のスロー3回転ループだけ転倒したが、それ以外はミスなくまとめて自国のファンから万雷の拍手を浴びた。

場内インタビューで三浦は「4大陸が終わってから3週間、悔いのないよう切磋琢磨(せっさたくま)して練習してきました。その成果がSPは出たんですけど、フリーは…(優勝も)悔しい思いがあります」。場内がどよめくと「うれしいです!」と言い直し、さらに大きな拍手を浴びた。

木原は「とにかく母国開催の世界選手権で優勝できたことを、うれしく思います。皆さんの後押しと声援が後半、足が止まりそうなところで、あと一押しをくださるので、ありがたいです」と感謝した。

2人は19年7月に結成。1季目の20年は4大陸選手権で8位など、まだまだ世界の上位は遠い存在だったが、カナダ・オークビルを拠点にブルーノ・マルコット・コーチに師事して本場の技術を吸収してきた。

昨年2月の北京オリンピック(五輪)では日本の宿願だった団体戦の銅メダル獲得に貢献。2人の進化がなければ届かなかった。同3月の前回世界選手権では銀メダル。「りくりゅう」の知名度も急上昇した。

今季は開幕前に三浦が左肩を脱臼。9月まで初戦を迎えられない出遅れもあった。年末の全日本選手権に飛行機遅延とロストバゲージなどで出場できないアクシデントもあったが、シーズン中盤からの国際スケート連盟(ISU)主要タイトルを総なめ。最後の世界選手権で昨季のリベンジを果たし、表彰台のてっぺんに上り詰めた。

年間グランドスラムの達成には、木原が「それもうれしくて。まさか達成できるとは思っていなかったので。全日本を取れなかったことが一番後悔が残るかな」と笑わせた。

続けて三浦が「フリーも悔しさが残ったので、来季に向けて、いい、みなぎり? みたいな、力の糧? みたいな…」と言葉に困ると、木原が即座に「来季はノーミスできるように頑張ります」とかぶせて、また笑いを誘った。感涙から一転、ファンと一緒に喜びを分かち合った。【木下淳】