ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(25=トヨタ自動車)が、日本男子初の2連覇を飾った。フリー1位の196・51点で合計301・14点。SP前日に右足首を痛めながらも、2位車俊煥(韓国)を5・11点差で振り切った。友野一希は6位、山本草太は15位。日本は次回大会の最大3枠を維持した。女子の坂本花織、ペアの三浦璃来、木原龍一組と合わせ、日本初の3種目制覇となった。

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宇野が氷に倒れ込み、天井を向いて大の字になった。最後のスピンで拍手は手拍子となり、最後の力を引き出してくれた。「昌磨、ガンバ~!」。コロナ禍で手拍子が続いていた応援は、今大会から声援に変わった。四方八方からのエールに背中を押され「こうして結果で恩返しできたことは、すごくうれしく思います」と結果をかみしめた。

好演技続きの最終組。その余韻が残るリンクで冒頭、4回転ループを降りた。続くサルコーは耐え、フリップは4・24点の加点を引き出した。前週に1度、SP前日の22日にも右足首を痛めた。この日の最終調整でも4回転フリップは5本中1本の着氷。それでも本番で降りた。後半のトーループ2本と合わせ4回転4種5本を着氷し「すごく危ないジャンプが多かった。これ以上できない演技だった」と胸をなで下ろした。

強さは確実に育まれていた。4年前、同じ会場での世界選手権。冒頭から2本の4回転ジャンプが乱れた。4位となり「自分の弱さに失望。『もう1回やっていいですよ』と言われてもできる気がしない」と言い放った。この日は違った。

「『もう1回やったら絶対に無理だな』っていう演技を、ショート、フリーともにできたと思います」

意味が変わった。過去の努力、経験による引き出しに加え、周囲の支えももらった。「昔だと家族。今だと真凜とか、本当に僕を支えてくれる皆さん。(コーチの)ステファン、(トレーナーの)出水先生、マネジャーとか、みなさんのお力があって、僕がある」。昨年9月に交際を明らかにした本田真凜(JAL)の名も出し、感謝を込めた。

来季に向けては異なる道を進む。場内インタビューでは「どういう形でスケートをやっていくか分からない」と宣言。今後も競技会には出場するが「ショーに出る中で、どんなスケートをできるかを探していきたい」とオフは理想を追う。宇野のスケートは、新たな段階に入った。【松本航】