男子W杯バレーがいよいよ30日に東京・代々木第1体育館で幕を開ける。パリ五輪予選として開催される今大会。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)で銅メダルを獲得した日本代表(世界ランキング5位)は、開幕戦でフィンランド(同28位)と対する。女子代表が惜しくも逃した五輪本番前年の出場権獲得へ-。そのキーマンを「龍神の爪」と題して紹介する。

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日本が誇る絶対的守護神、リベロ山本智大(28=パナソニック)は断言する。「なんか負ける気がしないんですよ。自分たちの持っている力を出し切れば、どこにでも勝てると思っている」。銅メダルを獲得したVNLでは、サーブレシーブ以外のレシーブを指すディグ部門ランキングで全体1位。ブラン監督から「世界一のリベロ」と評される171センチの小兵の頭には、頂点へのイメージができている。

コート上では常に笑顔を心がけ、誰よりもプレーを楽しむ。そんな姿が印象的だが、もともとはマイナス思考だったという。考えを変えたのは現指揮官。「19年に初めて代表に入ってからずっと使ってくれて、とても信頼してくれている。スキルもメンタルも強くしてくれた」と感謝する。勝負どころで必ずかけられる「ネガティブはいらない。常に良いプレーや勝利のイメージを持て」という言葉は、人生の指針にもなっている。

守備専門のポジション、リベロ。石川や高橋藍、西田ら攻撃陣に注目が集まることが多いが、日本の屋台骨を支えている矜持(きょうじ)がある。「1本目(のレシーブ)がないと3本目はない。最後に決めるのはアタッカーですけど、それまでの過程がとても大事。リベロやセッターがいないと成り立たない」。陰の立役者でいるつもりはさらさらない。「全部上げてやるから俺のところに来い!」と、ヒーローになる準備はできている。

東京五輪などの大舞台を経験し、年々強くなる自信と覚悟。「世界一は遠くない」。W杯バレーでは、その言葉が誇張でないことを証明する。【勝部晃多】

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