B1仙台89ERSの前ヘッドコーチ・藤田弘輝氏(38)の3シーズンを振り返る。連載第2回は、2年目の22-23年シーズンです。
◇ ◇ ◇
藤田氏はB1で5シーズンを指揮した手腕で、さっそくB1に復帰したばかりの仙台に勝ち星をもたらした。22年10月1日、京都との開幕戦は92-65の快勝スタート。10月は3勝6敗、11月は2勝3敗と負け越してはいるものの、負けた9試合のうち5試合が1桁点差の接戦。仙台はB1で戦える。そんな希望に満ちた2カ月だった。
11月27日の川崎戦を91-87で勝利し「チームが、いいエナジーを出して、鼓舞し続けて、今日はいい波長でバスケットが長い時間できた。目に見えないですけど、すごく大事なこと」。劣勢でも、勝利に向かって泥臭く粘り強く戦った。「なかなか勝てなかったり、うまくいかないこともいっぱいありますけど、人生もそう。僕も含めて、『もっとチームのためにやれることあるよね』っていうのは、みんなで共有できた。これからに向けて、すごくいい機会でした」。確かな手応えを感じていた。
しかし12月に入り、暗雲が垂れ込めた。主力選手のけがが相次ぎ、チーム状況は苦しくなった。12月25日の渋谷戦から23年1月21日の富山戦まで9連敗。出口の見えないトンネルの中にいた。1月7日の群馬戦では、前半を34-29で折り返すも、後半に56失点を喫し64-85と大敗。「後半本当に、非常に恥ずかしい内容のバスケットをした。プロとして見せるに値しないプロ失格の試合をチームでしてしまった」。
1月18日の秋田戦ではターンオーバー(ミスによる攻守の入れ替え)からの自滅が目立ち、65-93で敗れた。「ターンオーバーで崩れると、コーチとしてはなんて言っていいか分からないところが正直あります。すごくすごく悩んでいます」と明かした。B1で迎えた東北の冬は寒かった。
藤田氏は時折「人生と一緒」と口にする。人生はずっと勝ち続けられるわけじゃないし、負けることのほうが多い。それをどう乗り越えていくかが大事だという哲学がある。秋田戦後には「B2からやっと上がってきて、そんなにすぐ、勝つ、勝つ、勝つというのは現実的ではないと思う。もちろん勝ちに行くんですけど、だからといって負けたときに1回1回落胆するのではなく、もう1回立ち上がって戦うことが大事だと思う。後半戦もしっかり戦い続けたい」と言った。人生の歩みを止められらないのと同じ。負けても、前を向いた。
富山との第2戦で連敗を脱し、続く滋賀戦ではチーム初の同一カード連勝を果たすなど、秋田戦後は30試合で11勝19敗。千葉JのB1歴代最多記録となる連勝も「24」で止めるなど、強豪クラブからも勝利を挙げた。歩みを止めなかった。
19勝41敗でシーズンを終えた。「19勝しかって思っている人もいるのかな」と言いながら、「19勝を挙げたことは『めっちゃすごい』と思います」が本音だ。コーチ人生で一番負けたシーズンとなったが、最後には「自分たちはどんなときもベストを尽くしたっていう自信がある。全体的にはインテンシティ(強度)をしっかり保って、エナジーレベルを高く戦い続けられるチームだった。それがやり続けられるチームはなかなかない」と言えた。
2年目は「簡単なことばかりではなく、けがもたくさんあり、連敗もあり、悔しいしイライラすることもあった。なかなか個人的に結果を出せない選手もいたり、自分もチームと戦術が合っているのか、すごく悩んだ。それでも全員戦い続けたチームだった。それって人生で最も大事なこと。それを表現してくれたチームだと思います」とまとめた。
苦しく悩む中でも戦い続けた2年目だった。【濱本神威】(つづく)


