約5億円の放送権をめぐって、錦織争奪戦が勃発だ!

 来年1月19日開幕でテニスの4大大会全豪オープンの地上波放送権をめぐり、日本テレビを除いた民放各局とNHKが火花を散らしていることが6日、分かった。錦織圭(24=日清食品)が準優勝した全米は、衛星波のWOWOWが独占生中継。錦織フィーバーで、9月の新規加入件数が開局以来最高を記録しただけに、地上波も一斉に錦織争奪戦に参戦だ。

 9月の全米から3大会連続決勝進出で2度の優勝。最新世界ランクで6位に浮上した錦織の快進撃が、テレビ局を動かした。来年早々にある全豪は、錦織が挑む直近の4大大会。WOWOW独占にストップをかけようと、各局は水面下で交渉を続けている。

 全米の放送権は、地上波と衛星波を一緒にしたセット販売で、WOWOWが両方の権利を保有していた。しかし、全豪はばら売りで、WOWOWが保有しているのは衛星波だけ。地上波は空いている。約5億円ともいわれる放送権だが、錦織が優勝すれば、視聴率も跳ね上がることが予想され、5億円でも高くはない。

 各局が個々で交渉するのが通常だが、今は全豪サイドの売り手市場。同大会の放送権を手がける代理店は入札方式も考えているようだ。入札となれば、最も高値をつけた局が放送権を手に入れる。資金が豊富なNHK、フジテレビが有力だという情報もある。

 NHKは、12年全豪で錦織がベスト8に進出した時、急きょ、準々決勝から放送した実績がある。同局の関係者は「今は放送権は持っていない」としながらも「現場はやりたがっているようだ」と、敏感な話題に反応した。その12年大会での地上波放送権には5000万円を費やしたといわれており、今回の争奪戦にも「今までの信頼関係はある」と、他局よりもテニスを放送してきた自負を見せる。

 フジの関係者も「錦織は注目のスポーツ選手。中継できれば考えたい」と積極的だ。すでに来年5月の全仏を放送予定のテレビ東京の関係者も「情報をいただきながら、前向きに検討したい」。テレビ朝日も「興味を持っている。ただ、通常の番組をどうするかも考えないと」と前向きだ。

 テニスの試合は時間が読めない。個人の対戦競技で、男子は層が厚いため初戦負けもあり得る。その競技性から、地上波は放送に二の足を踏んできた。テレ東が生中継した楽天ジャパンオープン決勝は枠内に入りきらず、試合途中で放送が終わった。日テレは「民放の地上波に向いていない」と、争奪戦に参戦しない意向だ。

 地上波にとっては、リスクが高いテニスの放送権。しかし錦織をつかめる魅力は大きい。全豪とセットで11月のツアー最終戦の放送権を売るといううわさもある。「2大会となれば2桁の放送権料もあり得る」(関係者)。錦織の快進撃は数十億の金を動かすビッグビジネスへと発展している。

 ◆他競技の放送権

 他の国際競技の放送権料では、TBSが放送するゴルフのマスターズが5年で約10億円といわれる。野球のWBCは1大会で約20億円。これはすべての試合を含む金額。フィギュアの世界選手権は、1大会で3億円程度。同じテニスでも、ウィンブルドンを放送する地元英国のBBCは、3年で1500万ポンド(約27億円)を支払っているという。英国の法律で、ウィンブルドンの決勝は最初から試合終了まで完全生中継が義務づけられているという。