<高校ラグビー:尾道46-0朝明>◇1回戦◇27日◇花園

 尾道(広島)が朝明(三重)に完封で大勝した。高校日本代表候補のSO庄司直生(3年)が落ち着いた司令塔ぶりを見せ、快勝を演出。高校でラグビーを“卒業”し、進路を大阪市大医学部に定め、看護師を目指す文武両道ラガーが30日の2回戦で、V候補の一角・東福岡(福岡)に全力で挑む。

 試合開始直前に雷で進行が止まった。花園史上初の珍事。しかし、庄司の心は揺るがない。「体が冷えたらダメと思ったけど、それより気持ちが切れないように」。予定から25分遅れのキックオフ。率先して声を出し、前に出た。FB鮫島のキックを使い敵陣に攻め入り、開始5分で2トライを奪った。司令塔が完封圧勝を陰で支えた。

 高校日本代表候補なのに、高校でラグビーをやめる。看護師になる。小学校の時、がんで入院する祖母を見舞いに行って、献身的に働く人の姿にあこがれた。高校も文武両道で決めた。尾道は梅本勝監督(50)の就任後、東大に2人、京大に1人の花園ラガーを送り出している。そこで自分も、と思った。

 東日本大震災が起こった11年から毎年夏、岩手でボランティアを経験した。被災者の話を聞き、草刈りをして、人のために働く喜びが強くなった。「以前は『大学でもラグビーを』と思ったけど、決めました。両親も『高校で完全燃焼しろ』と言ってくれたので」。進路も明確だ。部活と並行して、授業開始前の“ゼロ限”で1時間、寮で数学の“課外授業”も受けてきた。今月の模試で、大阪市立大医学部看護学科のA判定が出た。

 ラグビー人生の総決算となる舞台。2回戦の東福岡は、願ってもない相手。リザーブだった昨年大会の3回戦で20-21。わずか1点差で負けた。「プレッシャーは強いと思う。どれだけ前に出続けられるか。リベンジしたいです」。すべてをかけ、名うての強豪にぶつかる。【加藤裕一】

 ◆庄司直生(しょうじ・なおき)1995年(平7)11月17日、大阪市生まれ。大阪・長吉西中からラグビーを始め、SOなどBK一筋。昨年大会にリザーブでメンバー入り。今夏、日本代表候補に。168センチ、72キロ。家族は両親と、尾道OBで鹿児島大1年の兄拓平さん(19)。