史上初の快挙に向けて、運命の1週間が始まる。

世界ランキング8位のラグビー日本代表は6日、ワールドカップ(W杯)1次リーグ第3戦サモア戦(愛知)の勝利から一夜明け、東京に移動。初の8強入りへ前進し、さらにA組首位突破が見える中、都内で会見したSH田中史朗(34=キヤノン)は、平常心を強調した。

13日に対戦する同9位スコットランドは、15年イングランド大会のリーグ戦で唯一敗れた相手。4年前の悪夢は引きずらず、チームスローガンの「ONE TEAM」で歴史的瞬間に向けて準備を進める。

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劇的勝利を挙げた翌日。途中出場で貢献した田中は冷静だった。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチとともに、3年かけて追い求めてきた目標に手が届くところまできた。そんな状況でも「変わらないですね。そこを意識してしまうとプレーに影響が出る。3勝というのは忘れて、次に全力で戦う気持ちでチームとしてやっていきたい」と穏やかに言った。

15年大会のスコットランド戦に、田中は出場していた。記憶にあるのはSHレイドローの存在。正確なキックで4本のPGを決められた。今大会も2試合で、ゴールキック2本とPG2本を全て決めるなど健在。田中は「ノーオフサイド、ノーペナルティーと練習から口に出していけば勝率は上がる」と指摘するように反則を抑えることが勝利へのカギになる。

チームとして平常心を意識している。藤井強化委員長は「今週1週間のために3年間過ごしてきたと言っても過言ではない。特に新しいことをするのではなく、3年間やってきたことを出せば勝機が見える。いつもと同じ1週間を過ごすことが大事」と話した。

冷静なチームとは裏腹に、日本中が盛り上がりを見せている。愛知・豊田市のホテルを出発する際には、約300人のファンに見送られた。新幹線の移動で利用した名古屋駅と東京駅でも、たまたま居合わせたファンが選手の列やバスに殺到した。日本中が歴史的瞬間を待ち望む中、「何かを変えると今までのいい流れがなくなってしまう。今まで通りチームとして準備する」と田中。平常心で、その時を迎える。【佐々木隆史】