ワーナーがいれば「し~んぱ~い、ないさぁ~!」。ラグビーW杯フランス大会で2大会連続8強に王手をかける日本代表(世界ランク12位)が勝利で1次リーグ突破の8日アルゼンチン(同9位)戦(ナント)に向けて3日、非公開で調整した。フィジカルで勝る相手に、キーマンは代表最長身201センチのロックのワーナー・ディアンズ(21)。何千回も鑑賞した大好きな映画「ライオン・キング」の主人公・シンバ同様に、強大な敵に立ち向かう。

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日本はアルゼンチンに勝てば2大会連続のベスト8進出。負ければ、1次リーグ敗退。そんなことは「ハクナ・マタタ」さ。ラグビー王国・ニュージーランド出身のディアンズがすり切れる程、見てきたライオンキングの挿入歌でも言っている。スワヒリ語で「どうにかなるさ」って。「お母さんが毎日見ていたから、自然と自分も見て。あの映画は大好き」と幼少期から、大人になった今も何度も見返す。「多分…。何千回かな(笑い)」。W杯前も鑑賞し「し~んぱ~い、ないさぁ~!」のマインドを整えてきた。

好きなキャラクターは主人公シンバ。「仲間と一緒に成長しているところ、最後スカーを倒すところは何度見てもいい」と、こちらも進化が止まらない日本最長身201センチ。アルゼンチンは近年、オーストラリア、ニュージーランド代表を敵地で破るなど、優勝候補にも名前が挙がるが、ライオンのようなたてがみがそびえ立つ。金髪のカーリーヘアは「ライオンキングを意識した訳ではありません(笑い)」。昨秋のニュージーランドとのテストマッチでは、猛烈なチャージからトライ。アルゼンチンの軸になるキック、ラインアウトに対しても、威嚇出来る咆哮(ほうこう)がある。

くしくも、流通経大柏時代の課外授業も「ライオンキング」。劇団四季による日本語での演劇は、来日したばかりのディアンズにとって、高いハードルだったが、物語は分かる。「ハクナ・マタタ」さ。初戦のチリ戦でW杯初出場。「国歌を聞いている時はエモーションを感じていた」と涙した日本の心を持つ。ここまで3試合全て途中出場。W杯初トライも決めた。チームは前日2日に、タックルを繰り返し、狩りに備え、この日は非公開練習。おのおのが牙を研いだ。舞台はサバンナの草原ではなく、フランス・ナント。代表最年少の目標は「世界一のロック」。リアルなキングへ、日本のストーリーを終わらせない。【栗田尚樹】

○…ディアンズの恩師、流通経大柏の相(あい)ラグビー部監督がエールを送った。「彼の性格は波がないこと。県内の1回戦でも、花園でも変わらない」。勝てば1次リーグ突破のアルゼンチン戦であっても、通常通りのメンタルに期待した。「彼の強みは世界基準の中でも戦えるだけのサイズ、機能させるだけのフィジカル、走力があること。ぶつかり合って欲しいですね」と日本から勝利を祈っている。

◆ワーナー・ディアンズ 2002年4月11日、ニュージーランド(NZ)生まれ。父グラントさんのNEC(現東葛)コーチ就任に伴い、14歳で来日。流通経大柏3年時に全国高校大会(花園)8強。書道の国際高校生選抜書展(書の甲子園)秀作賞。21年春にBL東京入団。所属での公式戦出場より先に、同年11月ポルトガル戦で代表初キャップ。現在10キャップ。22~23年シーズンのリーグワンベスト15。母ターニャさんはネットボール元NZ代表。201センチ、117キロ。