ラグビーW杯フランス大会で、日本代表(世界ランク12位)は8日に2大会連続8強をかけてアルゼンチン(同9位)と激突する。日本は5日、決戦の地ナントに入った。約2年ぶりに先発した先月28日(日本時間29日)のサモア戦で、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)となったのはFBレメキ・ロマノラバ(34=NECグリーンロケッツ東葛)。大会前の試合出場がない候補選手から2大会連続代表入りしたベテランの素顔を、妻恵梨佳さんが教えてくれた。3男1女の子供たちに誓った贈り物のためにも、父は強気で戦う。

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日本時間午前6時過ぎの愛情表現だった。「恵梨佳、アイラブユー!」。19年大会と同じサモア戦でPOMに輝いたインタビュー。約2年ぶりの先発で大役を果たした夫の画面越しの呼びかけに「このタイミングか(笑い)」とツッコミながら、いつも自信家、そして目標を達成してきた頼もしさを思い返した。

昨季のリーグワンの中盤からだった。「めっちゃ調子良い。これで(代表に)呼ばれなかったら誰が? めちゃ楽しみ」。最終的には「ディフェンス突破」など複数部門で1位となり、桜のジャージーへの思いは再燃していった。恵梨佳さんは「強気、強気、本当にいつも」と振り返る。

思えば出会った10年頃から。知人に誘われたレメキ家での鍋会で初対面。3歳年下で当時20歳過ぎ。印象は「クソガキ(笑い)。今の感じを子供っぽくした感じ」。どちらが告白することもなく、気づけば一緒にいた。

英語のメールは持ち歩いた英和辞書で訳した。12年に妊娠が分かり、都内の実家に結婚のあいさつに行くとき、不安になる隣で「大丈夫!」と強気だった姿が忘れられない。実際、ローマ字読みで練習した「シアワセニシマス」の言葉から、その明るい性格で恵梨佳さんの父と意気投合。互いの好物の焼き肉店で打ち解け合った。

7人制で16年リオ五輪に出場、15人制でも主力で19年大会を戦った。「もう代表はいいかな」。レメキはオフもない多忙さから解放され、子供が4人に増えた家族との時間を大切にした。「みんなで自転車で公園にいったり。なんでもないことが幸せでした」。

その頃、サニックスの解散で移籍したNEC(現東葛)では昨季から主将も務めた。30歳を超え、ポジションもWTB、FB、SOと幅を広げた。恵梨佳さんは「日々のストイックさが支えてたかな」。帰宅後、遊びに誘う子どもたちに「先にやらせて」と見つめるのは自身のプレー動画。

肉体にも関心深く、「シュワルツェネッガーとかを参考にしてました」。肉から魚に主食を変え、パンはライ麦に。大好きなお酒も控えた。そんな日々が、代表意欲も再燃させた。「真面目なんです。引退するかなと思ったところから、絶好調ですね」とほほ笑む。

首筋には漢字で「家族」のタトゥーがある。4年前のW杯ではノートライに終わり、長男の一志(いし)君からダメ出しを受けた。今はラグビーの知識が増えた長男に代わり、次男の基(もと)君がダメ出し役。サモア戦もトライなしのPOMだった。だから、強気の父は約束した。「トロフィーを4人分もらうよ」。

それはPOMの記念品で19年大会も含め、あと2つで人数分となる。次は16年のジョセフ体制初陣でトライを決めた縁深いアルゼンチンが相手。さらにその先に、トライと贈り物をにらむ。そしてまた、あの一言を伝える時を狙っている。

「アイラブユー!」

家族を、日本を喜ばす自信は…あるに決まっている。【阿部健吾】

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◆サモア戦のレメキ 第2戦イングランド戦でFBマシレワ(花園)が負傷交代し、代表から離脱。21年10月オーストラリア戦以来の先発に抜てきされ、ボールを前に運んだ距離は151メートルで両チーム最多だった。前半13分に左サイドを突破し、ラブスカフニの先制トライにつなげるなど存在感を発揮。トライに強いこだわりがあるため「今回もノートライだけど」と前置きしつつ、4年前のW杯サモア戦に続くPOMを「全然うれしい」と喜んだ。

◆レメキ・ロマノラバ 1989年1月20日、ニュージーランド・オークランド生まれ。プロボクサーだった父、母はともにトンガ人。4歳で競技を始めた。高3で移住したオーストラリアのランコーン高を卒業。09年に来日してキヤノン(現横浜)、マツダ(現広島)、ホンダ(現三重)、宗像を経て21年から東葛。14年に日本国籍を取得し、7人制代表で16年リオデジャネイロ五輪4位入賞。同年11月アルゼンチン戦で15人制初キャップ。19年W杯日本大会は5試合中3試合出場。現在19キャップ。愛称マノ。178センチ、96キロ。

 

○…サニックス時代の後輩で、現在は映像制作などを手がける「LAMP」代表の山田大生さんは、レメキの兄貴ぶりにほれる。入団後に会った翌日に「今日、うちくる?」。チーム内で孤立する若手に進んで声をかけ、面倒を見た。全体練習開始時には汗だくが定番。誰よりも早くクラブハウスにきて、自主練習する姿があった。「だから、後輩はサボれない。やってやろうとなりました」。気持ちが引く場面を感じると「猫だな」と指摘。「自分はライオンだと。奮起を促して、家に招いてかわいがってくれた。いまの金髪姿は、まさにライオンですね」と感嘆した。