<柔道:世界選手権>◇30日◇オランダ・ロッテルダム

 柔道の日本男子代表が、歴史的敗北を喫した。100キロ級の穴井隆将(24=天理大職)が準々決勝で、100キロ超級の棟田康幸(28=警視庁)が3回戦で、それぞれ敗退し、階級制が導入された64年東京五輪以降の世界大会で、初の金メダルなしに終わった。実力下位の選手に負けるケースが多く、男子の篠原信一監督(37)は精神的弱さを指摘した。穴井と女子78キロ超級の塚田真希(27=綜合警備保障)は銅メダルを獲得した。

 今大会を象徴するような負け方だった。棟田が3回戦で敗れた。相手と組み合い「待て」が掛かった後に、引き落とされ、左肩を痛めた。その後、右太もも裏も故障。立つのがやっとの状態になり、勝負にならなかった。戦う姿勢を見せられず、4度の「指導」を受けて反則負けした。

 棟田は「もう、今まで何やってきたんだろうという感じです。ケガは言い訳にできない。自分の実力なんだと思います」と言葉を絞り出した。井上康生特別コーチが「セコンド役」についても、カンフル剤にはならなかった。最後のとりでになった穴井は、準々決勝で一瞬のスキをつかれた。大外刈りにいったところを、隅落としで返された。全7階級で、決勝まで進んだのは60キロ級銀メダルの平岡だけだった。

 篠原監督

 穴井は自爆した。これが柔道。1つのミスで終わってしまう。棟田は試合をするたびにケガをする。ケガの後、何が何でも勝つという姿勢が見られなかった。それが残念。厳しい戦いになるのは分かっていたが、それを強化しきれなかった私の責任です。

 全階級とも実力で完敗したわけでない。無名の格下に取りこぼすケースがほとんど。平岡をのぞけば、日本選手に勝った選手の中で、金メダルにたどり着いた選手は1人もいない。つまり、強者に負けたわけではない。

 篠原監督

 選手が世界に出て、絶対に金メダルを取るという気持ちを持っているのか。選手個人が、力を出し切ったのか。体力面の強化も含め、もう1度、一からでなくゼロからやっていきたい。世界で金を取る意識がない選手は、どんどん替えていく。心の強い選手を選考していきたい。

 9月には、出直しの合宿が予定される。吉村強化委員長は「コーチも育てないといけない」と言った。来年の世界選手権開催地は東京。地元で奮起できなければ、取り返しのつかない事態になる。【佐々木一郎】