オランダで親善相撲公演(5、6日)を行う佐渡ケ嶽部屋の一行35人が2日、成田空港発の航空機で同国へ出発した。大麻の所持、使用に寛容なオランダの国内事情や新型インフルエンザの予防対策のため、日本相撲協会の助言で公演はいったん中止になったが、オランダ政府側の反発もあって一転開催に。トラブル回避のため、現地での同一行は公式行事以外は外出禁止、宿泊ホテルの玄関には警備とプロの監視員を付けられることとなった。

 万が一のことがあってはいけない。公演主催の在蘭日本商工会議所(JCC)は、佐渡ケ嶽部屋一行35人から自由を奪うことを決めた。この日午前9時、成田空港に集まった一行に、公演準備事務局担当者が、現地での徹底した「自由行動禁止」を伝えた。

 同担当者によると、約12時間かけてアムステルダム空港に到着の一行はその瞬間から「団体行動」が義務付けられる。現地では公演を含む公式行事以外は宿泊ホテルから出ることも許されないという。「通常警備に加え、複数のプロの監視員を付けますので、勝手に出ようとしても無理です」(担当者)。

 開催の最終決定までの経緯から、そうせざる得ない状況にはある。日本相撲協会側は夏場所中に、オランダが大麻に寛容な事情をかんがみ、公演中止を助言した。昨夏から大麻をめぐり力士4人を解雇し、大麻に敏感になっての判断だった。事実、オランダでは一部コーヒーショップで大麻を購入できる。飲食店に入れば、間接的に煙を吸う「副流煙」の可能性もある。佐渡ケ嶽親方も助言を受け、いったん中止を決定。しかし、オランダ政府側の反発もあり、「中止にすれば、大変な迷惑を掛けることになる」と判断を翻した。

 協会側による「中止助言」は、表向きは新型インフルエンザ予防対策だったが、オランダの感染者は3人だけ。この日、成田空港でマスクをした一行もオランダでは「つけているとかえって怪しまれる」とマスクを外すという。

 仮に繁華街などを自由に出歩き、自覚の足りない者が大麻を所持、使用するなどの問題を起こせば、親善公演が台無しになり、佐渡ケ嶽親方の責任問題になる。大きな重圧を背に旅立った同親方は「重圧はありますが、それくらい緊張感があった方がいい。団体行動でしっかり管理していきます」と気を引き締めた。帰国は8日予定。成田空港の税関を抜けるまで気は抜けない。【柳田通斉】