新人補強-。皆さん、すでにご存知でしょうが、毎年行われているドラフト会議で希望の選手を指名。交渉権を得た選手と入団交渉をして獲得するシステム。シーズン中、スカウトが東奔西走、アマチュア選手を入念にチェックして資料を作成。現場の監督等を交えた会議で指名順位を決めていく。いい素材をいかにしてものにするか。クジ運にもよるので、まず完璧はないと思うが、ほぼ予定どおりの指名権を得たチーム。逆に上位指名選手をことごとく抽選ではずしてしまった球団がある。ドラフトの戦いも悲喜こもごもだが、将来を見据えたチーム作りを考えた場合、ここで獲得した選手の力が大きなウエートを占めている、だから厳しい戦いになる。

 もちろん、トレードによる補強もあれば、外国人で補う方法もある。最近ではFA制度が設けられているものの、簡単に手を出せるほど容易なものではない。やはりチーム作りの理想は自前で選手を育てていくことだ。そういう意味でこの時期、若い選手の存在が気になる。特に新人、それも高校出のルーキーが何試合も連続してスタメン出場していると、どうしても気になるし注目したくなる。鳴尾浜球場に足を運んだ。阪神-広島の3連戦を拝見していると、ピッタリ当てはまる選手がいた。まだ体の線は細いが、守りを見ていると動きはシャープだし、はつらつとしているところが高卒の新人らしい。守備につくときも誰よりも真っ先にベンチを飛び出して守備位置へ走る。広島・桑原樹内野手(19)である。静岡の常葉学園菊川からドラフト5位で入団。身長180センチ、体重74キロ。右投げ、左打ちで脚力もあり、ショートを守っている。

 高校時代は春と夏の甲子園大会に出場、2本のホームランを放っているが長距離砲ではない。まずは今季から新たに就任した高二軍監督に桑原についての話を聞いてみた。「いいセンスを持った選手ですね。強化選手の一人ですが先が楽しみな選手です。まだやるべきことはたくさんありますが、守備での動きはいいし、バッティング面でもいいものを持っています。まだ体の線は細いんですが、細いわりには体はしっかりしています。もちろん、これからプロでやっていける体力をつけないといけませんが、今後は試合に出て、いろいろ体験して状況判断などいかに勉強していくかですね」強化選手とは将来を嘱望された選手。当然、全選手が期待されているわけだが、その中でもワンランク上と見ていい。

 走、攻、守三拍子揃っていると見た。広島は若手がよく育つ。チームの土壌にそういった競争意識が脈打っているのだろう。若い桑原にとっては願ってもないチームカラーだ。ライバルの中で揉まれ、己に妥協することなく練習に取り組んでいけば、おのずと力は付き技術は向上する。「プロの世界にもだいぶ慣れました」笑顔にはまだあどけなさが残っている。外野の丸は、今や一軍でバリバリのレギュラー、菊池もファームから巣立った選手。松山も頑張っているし、今シーズンからは鈴木誠が一軍に定着しつつある。

 これらの選手に続くのは間違いないと思うが、まだまだ即一軍を期待するだけの力はない。4月20日現在の成績は13試合に出場して、41打数、10安打。打率は.234で打点は3。物足りない数字だがこれが現在の実力といったところ。だが、攻、守ともにのびしろは十分にあるセンスの持ち主。

 「プロに入って約4カ月ですかねえ。お陰さまで、もうチームにはすっかり溶け込むことができました。やはり一番気になったのはスピードの違いです。今は、そのスピードについていけることを課題にして練習に取り組んでいます。金属と木製バットの違いは高校の時も、たまに木のバットで打っていましたので、それほど違和感はありませんでした。欲を言えばもうちょっと体が大きくなってほしいと思いますが、とにかく現状はやることがいっぱいありますので、頑張って身に付けていきます」桑原である。

 もっともっと純粋に野球が好きになることだ。桧舞台で活躍している人は、やはり野球が好きであり続けた選手だ。