15日にウエスタン・リーグが開幕した。現役時代「ミスタータイガース」として活躍し、昨オフ、2軍監督に就任した掛布雅之氏が、若虎たちをどのように変えていくのか。当コラムでは同監督を直撃取材した。春季安芸キャンプからスタートした掛布阪神の「超変革」を3回連載で追う。

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 「このタイガース(Tigers)の上、下を着たら、身がぐっと引き締まりますよ。昨年まではユニホームの上着はなかったし、わりと自由にやらせてもらっていただきました。責任がなかったわけではありませんが、チーム構成まで考える立場ではありませんでしたし、ある意味、気持ちの上では楽でした。でもね、今年は組織の中に絶対いないといけない存在です。気持ちの持ち方は、去年と今年では全然違います」

 掛布雅之2軍監督のスタートは安芸キャンプからだった。同市営球場は入団時からみっちり鍛えあげられた場所。自分の現役時代を思い出し、さぞや厳しいキャンプになると思われた。グラウンドでの掛布といえば、若い頃は常に先頭を切って走り、スターに成長してもユニホームはいつも泥まみれだった。特打、特守は目が離せない。当時はまだ現在ほど施設が整っていない。掛布の特打となると大変。同球場に来場する通路は、ライトフェンスの後方から坂道を登ってくることになっており、フェンス越えを連発する打球がファンに直撃する可能性があって、危険極まりない。通路を登り切ったところに“危険通報人”を立たせて注意をしていたほど。特守でも大ハッスル。右に左に打球を追ってダイビングして捕球する。来場していたファンが三塁側のスタンドに移動。「もうヘバったんかい。しっかり捕らんかい」(ノッカー)「まだまだ大丈夫や。しっかり打ってこんかい」(掛布)丁々発止のやりとりにスタンドは大いに盛り上がった。

 タフだった。根性もあった。こんな掛布をイメージしたが、もうガムシャラな掛布ではなかった。まわりを冷静に見つめしっかりした方針を打ち出してキャンプは大成功。故障者を1人も出さなかったのだからたいしたもの。同監督は「練習が楽やったのかなあ」と冗談を言っていたが、故障者“0”は打ち出した方針が功を奏した。キャンプのひとクールは4日間、その各クール毎に1日“自主練習”の日を設けた。昼から行われる個別練習を“自己申告制”にし、特打、特守、ウエート、ランニング等で何に取り組むかを、トレーナーが出した各選手のメニューから前日に選手が自分で決めて実行する。ねらいは「やらされる」のではなく、自分から「やる」という責任を持たせることにあった。

 普通に考えると、選手が楽な練習の方に走りがちに思われるが、その点も含めての方針だ。意図を掛布監督に聞いてみた。「野球の怖さを知ってほしいからです。答えはすぐ出るわけではありませんが、我々がなんぼ口を酸っぱくして言っても、体験してみないとわからないと思うんです。だから、やりたいこと、やらないといけないことを自分で考えて、自分から進んで練習に打ち込むことです。野球はですねえ、自分に強くならないといい選手にはなれませんから」。要するに、与えられた自主練習で楽をするものなら決していい結果は出ないということ。その怖さを自分で体験するための方針(自主練習)なのだ。

 トレーナーの協力もあった。自主練習のメニュー等々中心になって発案し、実行に移した鎌田一生トレーナーに話を聞いてみた。「各選手ごとに、その時点で体が疲れている場所は違います。ですから、選手によって筋肉などの疲労度が高い箇所を避けて、多少の余裕があるところを鍛えるようにしました。無理をするとケガにつながりますからね。掛布監督がこういう日を設けてくれましたので、我々は大いに助かりました。故障者が出なかったキャンプなんて初めてです」と語ってくれた。もうひとつある。練習前のアップをするその前に、さらに30分間の体幹トレーニングを取り入れたのだ。「体を十分に温め、体がしっかりできあがってから練習にはいったのも、いい結果につながったと思います。このトレーニングは今もやっていますし、今後も続けていきます」(トレーナー)ときっぱり。

 選手にとって故障は“大敵”。スローガンの超変革はここでも功を奏している。興味津々。掛布阪神(ファーム)をもう少し追いかけてみることにした。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)