3季通じて道大会で初めて行われた点灯試合。カクテル光線に照らされたマウンドで、鉄腕が歴史的勝利の主役となった。札幌清田のエース実松雄貴(2年)が124球を投げ抜き、3安打1失点で札幌光星を下して初戦を突破。札幌地区予選から5試合すべてで完投のタフネス右腕が、チームを秋6度目の挑戦で初勝利に導いた。

 午後4時21分、道大会の球史に刻まれる歴史的な“灯”が球場にともった。8回のマウンドに上がった札幌清田のエース実松は「ナイター照明の中で投げるのは初めての経験だったので、楽しかったし、うれしかった」。全身にカクテル光線を浴びて、疲れ切った体に最後のムチを打った。9回に2四死球で1死一、三塁のピンチを招いたものの、札幌光星の代打攻勢に真っ向勝負。最後の打者を空振り三振に仕留めると、ようやく安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 公立校の大黒柱として、チームを創部41年目で秋は初の全道勝利に導いた。札幌地区予選で全4試合を投げ抜いた鉄腕は、舞台が変わっても健在だった。3回に先制点を許しても、自信は揺るがない。日が傾くにつれ急速に冷え込む中、ユニホームのポケットに忍ばせたカイロで指先を温めながら、打たせて取る投球で味方の反撃を待った。

 先輩から譲り受けた鉄腕としての技と心が、大舞台で生きた。昨夏の札幌地区予選代表決定戦。延長15回引き分け、そして翌日の再試合と1人で投げきった2学年上の先輩、中島啓汰投手(北海学園大1年)の姿を、間近で見てきた。この日の124球目。最後は、今夏、直接指導を受けて磨きをかけたスライダーで勝負した。渡部桂輔捕手(2年)は「7回以降、真っすぐの球速がぐっと上がって、いつの間にそんなことが出来るようになったんだろうと思った」。終盤にギアチェンジした同級生の成長が、頼もしかった。

 今秋5戦連続で完投勝利と、伸び盛りだ。今秋から指揮を執る宮田敏夫監督(51)は「彼が降板したら、苦しい試合になる。心中と言えば、そうですね」と、チームの命運を託す。「これからも完投はしていきたい」と実松。覚悟を持って、準々決勝のマウンドに挑む。【中島宙恵】