<高校野球北北海道大会:旭川工7-1富良野>◇30日◇1回戦◇旭川地区予選

 いた、ナックルボーラー!

 旭川地区1回戦で、夏の甲子園に4度出場している旭川工が7-1で富良野を下し、6年ぶりの甲子園出場へ好発進した。先発した2年生左腕の官野峻稀投手は、現代の「魔球」と言われるナックルボールの使い手だ。要所でその変化球を有効に使い、9回2安打1失点。2回以降は無安打に抑える完璧な内容だった。

 球速100キロのスローボールが突然、進路を変えた。6回裏1死走者なし。官野が富良野の2番高崎見太捕手(3年)に投じた1球は、まぎれもなくナックルボールだった。揺れて落ちる不規則な軌道を描き、2ストライクに追い込まれていた高崎のバットは空を切っていた。

 高校生はもちろんプロ野球選手でもめずらしいナックルボールの使い手だ。投球の約7割は変化球だが、120キロ台の直球、110キロ台のスライダーなどに加え、要所で使用する。富良野戦で投げたのは10球未満だったが効果は十分だった。9回を投げ2安打10奪三振。2回以降は三塁を踏ませない完璧な投球だった。「ナックルは有利なカウントで投げた。2回からは思ったところにいった」と笑顔を見せた。

 試合中に、いくつかあるナックルボールの握りを試し、その日に1番しっくり来る握りを採用。3本指を2本指にしたり、打者によって握りを変えるときもある。この日は3本指。対戦した高崎は「メチャメチャ揺れていた球があった」となじみのない球筋に驚きを隠せなかった。

 強豪旭川工で勝ち抜くため魔球を身に付けた。中学時代までは主に外野手だったが「変わった変化球を身に付けたい」という理由から、中学3年生の時にキャッチボールをしながら試投。思うように制球もできたことから、高校入学後から投げ始めた。自宅でテレビ見ながら、ハンドグリップなどで握力を付け、ナックルをマスターした。

 6月上旬には、センバツ8強の北海と練習試合を行い3-2で勝利。官野も完投して自信を付けた。次戦の相手は昨夏王者の旭川実。「立ち上がりに気をつけて今日みたいにしっかり投げたい」。現代最強の変化球を武器に、2年生左腕がチームをけん引する。【石井克】