<IBAF18UW杯:日本10-0韓国>◇5日◇予選2次ラウンド◇台湾・台中

 松井がスライダーを“封印”して韓国をねじ伏せた。高校日本代表が10-0で韓国に7回コールド勝ちした。先発の桐光学園・松井裕樹投手(3年)が最速148キロの直球を主体にした投球で、6回4安打5四死球6奪三振無失点。昨夏の甲子園で22奪三振の記録を作ったスライダーに頼らず強敵韓国を撃破した。予選2次ラウンド初戦を大勝で飾り、勢いそのままに今日6日は強豪キューバと対戦する。

 いきなりのピンチに松井がサインに首を振った。1回、連続四死球で1死満塁を招いた。迎えた5番沈をすべて直球で3球三振。6番安にも直球を5球続けてカウント2ボール2ストライクと追い込んだ。いつもならば決め球は直球、もしくは伝家の宝刀スライダー。しかし、松井はどちらも選ばなかった。捕手の森友のサインに首を振り、チェンジアップを投じ、見逃し三振に仕留めた。

 松井

 直球のサインが出ていたんですけど、首を振りました。チェンジアップで緩急の差をつけようとしました。

 しかも、この決め球は右打者の内角をえぐった。今年に入って習得した新球は、右打者の外角へ逃げていく球として使ってきた。それを世界の舞台で変えた。いかに韓国が松井を研究していても、予想できないパターンといっていい。

 松井

 あそこは満塁で最少失点で抑えようと思った。だから内角へのストライクで空振りが取りたかったんです。

 試合後「勝つために三振はいらない」と話した左腕が唯一狙った三振だった。

 チームで韓国打者のデータを分析した結果、力のある直球が有効という結論を出していた。前夜、西谷浩一監督(43)らから「米国のように大振りしてこない。力で行った方がいい」と韓国対策を伝えられた。そのため、決め球のスライダーではなく、直球を中心とした配球になった。

 3回まで投じた59球のうち、スライダーはわずか5球。徐々に相手が直球に慣れてきた4回以降は46球中10球と割合を増やしたが、直球とチェンジアップとの緩急が効果的だった。105球で奪った18のアウト中12個を直球で仕留め、三振は6個。最速148キロの直球で韓国打線を差し込み、ゴロとフライを量産した。

 松井は投球の引き出しが多い技巧派でもある。指先の感覚が鋭く、ピンチの場面で使ったチェンジアップは今年に入ってから習得。今大会に向けてもカットボールを覚えていた。中学時代の恩師、青葉緑東リトルシニアの中丸敬治監督(61)は「松井は手先が器用。変化球は教わるとすぐ投げられるようになった」と話すほど。相手に合わせた対応力の高さが、勝てる投手としての信頼感を生んでいる。

 松井は「明日も先発で行く準備はします」と意気込むが、順当ならば次回登板は8日の順位決定戦になりそうだ。一戦必勝の戦いが続く中で、左腕にエースの風格が漂ってきた。【島根純】

 ◆松井球種メモ

 松井の球種は全部で5種類ある。最速149キロの直球と、「消える」と言われる120キロ後半のスライダー。同じ軌道で球速が10キロ近く落ちる落差の大きいカーブと、今春から習得したチェンジアップにカットボールがある。カットボールは今夏の神奈川大会敗退後に練習し、日本代表合宿で初披露した。どの球種も同じ腕の振りで投じられるために、打者はタイミングが取れない。