二刀流の「打者」は、もはや完成の域なのか。日本ハム大谷翔平投手(21)が4試合連続本塁打を放った。2-0の3回、逆方向に7号2ラン。バックスクリーン右に引っ張った前夜の自身初3試合連発を、一夜で更新した。投手としてはここまで1勝止まりと苦しんでいるが、バットでは右に、左に勢いが止まらない。チームを4月27日以来の勝率5割に導いた。

 両手に残る感触は心地いいものではなかった。3回無死一塁。大谷は左翼へ上がった打球を、半信半疑で見つめた。「こすりですね。ラッキーでした」。狭い東京ドームの2列目席に飛び込む1発。だが飛距離は小さくても、インパクトは特大だ。野手出場4試合連続の7号アーチ。「たまたま続いてるけど、四球1つ取るのも必死。安打1本打つのも難しいと思っています」。謙虚な姿勢が大谷の原動力。だから進化が、止まらない。

 相手バッテリーとの勝負に完勝した。第1打席の四球は、4球すべて、腰を引いてボールをよけた。徹底的な内角攻め。迎えた2打席目だった。「初球まず内角で入って外かなと感じていました」。再度、厳しく攻められることを覚悟しながら、甘くなった初球のストレートにバットは反応した。5回にも、胸元の直球を腕をたたんで右前へ。「基本的には、内角も外角もしっかり振れるところがストライクゾーン」。内角球でもフォームは乱れず、外角にもバットは届く。左翼方向にスタンドインされれば、相手はお手上げだ。

 先月、日程の都合上、東京で丸1日の休みがあった。大谷はひとりでタクシーに乗り込み、2軍施設の千葉・鎌ケ谷に向かった。練習のためではない。「サウナに入ってゆっくりしたいです」。ここまで37試合を消化し、7登板、野手では17試合の出場。昨年までよりもグラウンドに立つ時間は大幅に増えた。疲れがないわけがない。今カードが始まる前日の9日も、ホテルの自室にこもった。空いた時間は疲労回復を最優先。体をいたわり、英気を養い、“戦場”に立つ。

 チームは4月27日以来の5割復帰。投手で苦しんでいる大谷だが、バットでの貢献度は大きい。「出られる試合で結果を出すのが仕事。与えられたところでしっかりとやっていきたいです」。今後の投手でのリベンジ、そして本塁打量産へ。「二刀流」4年目は、伝説のシーズンになるかもしれない。【本間翼】

 ▼大谷が4試合連続の7号。これで本塁打率は8・43へ上昇。シーズン10本塁打以上の選手で本塁打率ランキングを出すと、1位は60本打った13年バレンティン(ヤクルト)の7・32で、10位は77年マニエル(ヤクルト)の8・52。現在の本塁打率をキープすれば大谷は10傑入りする。

 ▼日本ハムで4戦連発は13年アブレイユ以来となり、日本人選手では10年中田以来、6年ぶり。この日は左翼への1発で、今季は7本のうち5本が左翼方向。今季、逆方向への5本は大谷だけ。