ミラクル・カープだ! 広島がサヨナラ勝利で9連勝を飾った。1点を追う9回、丸が出塁し「神ってる」鈴木がつないで好機を拡大。2死満塁から会沢の適時打で追いついた。最後は松山が打ち上げた左中間への平凡な飛球を阪神守備陣が激突して落球。球団初、セ・リーグタイ記録となる今月5度目のサヨナラ勝利を決めた。9連勝は、98年以来18年ぶりだ。

 3万を超える観衆が、グラブから落ちたボールを指し、大きな口を開けて驚いた。突然のサヨナラ勝利に一塁側ベンチは全員が飛び出し、慌てて持ったペットボトルで歓喜の儀式を行った。ミラクル・カープの締めくくりは同点の9回2死満塁だった。代打松山は平凡な飛球を左中間に打ち上げた。「やってしまったと思った」と、1度は下を向いた。スタンドも延長戦へと気持ちを切り替えようとしたその瞬間、阪神の左中間が激突し落球。中堅の失策で勝った。

 緒方監督 信じられない形でね。何て言ったらいいんだろう。信じられない幕切れになった。やっぱりホームでやっているアドバンテージ。相手に相当なプレッシャーがかかって、こういう結果につながったんじゃないかな。

 意識の徹底が激勝を呼んだ。8回に1点を勝ち越された直後、異例のタイミングで円陣が組まれた。それまで阪神岩貞の前に放った安打は2回の新井のソロだけ。チェンジアップにバットが止まらず、好調打線も不発だった。輪の中心で石井打撃コーチは「もう1回我慢してつないでいこう」と呼び掛けた。試合前に伝えた見極めを再確認した。

 奇跡は円陣通り、つないで起こした。9回。先頭丸が左前打で出塁。1死一塁から、緒方監督が勝負強さを「神ってる」と表現する鈴木が中前打でつないだ。新井が敬遠で、下水流はフルカウントから直球を見逃し三振。2死満塁としてから、会沢が左前に同点適時打。3球続いたチェンジアップをカットし、浮いたところを仕留めた。自身25打席ぶりの安打に「前の打席でやられた。意識はかなりあった。いける、いくんだという気持ちだった」。指示の徹底で追い付き、ミラクルで勝った。

 今月5度目のサヨナラ勝利は、球団史上初でセ・リーグ最多タイ記録だ。貯金を14とし、18年ぶりの9連勝とした。さらに81年以来35年ぶりの本拠地10連勝と記録ずくめの快進撃だ。

 それでも、緒方監督は「連勝よりも(交流戦明けで)阪神に3つ勝てたことが大きい。でもミスもある。見逃さないよう1戦ずつ。一丸で戦っていくだけ」と引き締めた。神懸かり的な予期せぬ結末。運までも味方につける強さが、広島には宿っている。【池本泰尚】

 ▼広島はサヨナラ勝ちで9連勝。広島が相手外野手の落球エラーでサヨナラ勝ちは、99年9月4日中日戦(左翼福留が落球)以来、17年ぶり。今季のサヨナラ勝ちは6度目だが、そのうち5度は6月に記録。サヨナラ勝ちの月間最多記録は55年7月阪急の6度で、5度以上は史上7度目。セ・リーグでは68年7月巨人、93年5月ヤクルト、15年4月中日に並ぶ記録で、球団史上初の月間5度のサヨナラ勝ちとなった。

 ▼広島の9連勝は98年4月11~21日以来で、00年以降のセ・リーグで広島だけが9連勝をしたことがなかった。この9連勝はすべてマツダスタジアムで記録し、同球場では6月5日ソフトバンク戦から10連勝。広島が本拠地球場で2桁連勝は、広島市民球場時代の80年5月31日~8月19日の19連勝、81年9月11日~10月3日の11連勝に次いで35年ぶり3度目。