広島が7日、巨人にFA移籍した丸佳浩外野手(29)の人的補償として長野久義外野手(34)を獲得したことを発表した。

      ◇       ◇

優勝しなければいけない、チームを強くしなければいけないというのは分かるが、大事なのは何なのかな。とても残念というか、寂しい。FAで選手を取ったそのツケが来るというのは分かっている。しかし優勝へ向け「よし、行くぞ!」という時にチームの中心となるベテラン選手がたて続けにいなくなるのはどうなのか。選手は「自分だってどうなるか分からない」という不安な気持ちになる。これでチームが1つになれるのか。チームに良い空気は流れないと思う。

私は89年にトレードで巨人から中日への移籍を経験した。当時の監督の藤田さんには「残してください。2桁勝ちます。ダメだったらトレードしてください」と言ったがトレードが決まった。断れば定岡(正二)のように引退するしかなかった。まだ野球をやりたいということで受け入れた。ただし「パ・リーグではなくセ・リーグで」とお願いした。パ・リーグだと巨人と戦えませんから。中日に行けたことで巨人と戦えた。出されてうれしい選手はいない。ただ勝負師であるならプライドを持っていないといけない。

移籍1年目に20勝で最多勝を飾れた。野球選手というのは言葉ではなく姿をファンに見せないといけない。姿というのはイコール「結果」。男として、プロとして「まだやれるんだ」と見せないといけない。ファンの方には「何で巨人は西本を出したんだ」と思ってもらいたかった。だから特に巨人戦は燃えた。FAの人的補償という制度はルールだから仕方ないが、まさか内海や長野がと、納得できないファンも多いのでは。これではトレードと同じ。もう少し制度そのものを考える必要があるのではないか。(日刊スポーツ評論家・西本聖)