<日本ハム4-5阪神>◇1日◇札幌ドーム
激闘にケリをつけたのは伏兵のバットだった。延長10回、1死二塁。途中出場の藤本が、この日の初打席で、前進守備の右翼手の頭上を越える決勝三塁打を放った。これが今季、やっと2本目のヒット。03年のV戦士は、最近では怒られ役、引き立て役でしかなかった。意地の一撃。そういえば、この回の2点にからんだのは藤本をはじめ赤星、秀太とすべて8回の代走組。JFKだけでなく、野手も選手層は厚いで。
定位置より浅く守っていた右翼稲葉が、必死で右手を伸ばす。だが届かない。右中間にボールが弾んだ瞬間、虎党で埋まる右翼席のボルテージは最高潮に達した。藤本は快足を飛ばし、悠々と三塁に到達した。
「ラッキーだった。狙った訳じゃなかったけど、甘かったので思いきりいきました」。8回に代走で出場し、3-3の延長10回表に初打席。1死二塁から、日本ハム武田久の132キロ内角スライダーを上からたたく。強く回転がかかった飛球が右中間を抜けた。貴重な貴重な勝ち越し打。三塁ベース上で平静を装う藤本に、惜しみない声援が送られた。
苦しんでいた。03年のV戦士で遊撃でレギュラー。だが、同年に3割をマークして以来、精彩を欠いていた。その間に遊撃は鳥谷のポジションになり、スタメン二塁を不動にできないまま、4年が過ぎた。昨オフにはオリックスから平野が加入。今季はわずか20試合出場で打率6分3厘。16打数1安打と全く結果が出ていなかった。ようやく飛び出した2安打目は、チームを勝利に導く値千金の一打となった。
「フライだけはダメ。思いきりたたきつけようと思った」。反省が生きた。5月28日ロッテ戦(甲子園)。途中出場し、1点を追う9回2死一、二塁で打席が回ってきた。初球を打ち上げ、力ない三飛でゲームセット。「だからレギュラーを取れないんや」。指揮官から厳しい言葉が飛んだ。失態を早く挽回(ばんかい)したかった。同戦以来の試合出場で、4日前とは違う打撃を披露した。
さらに、足で決勝点をもぎ取った。1死三塁。続いて、同じく8回代走から出場した秀太のゴロが、前進守備の二塁田中の正面に転がると、迷わずスタートを切った。本塁に送球され、間一髪のタイミング。それでも捕手高橋のブロックをかいくぐり、ホームベースに左手を伸ばした。リードを2点に広げる5点目をゲット。10回裏に1点差に迫られただけに、この1点が大きかった。
そんな勝ち越し劇の舞台を整えたのは、藤本、秀太と同じ「8回代走組」の赤星だ。10回表。先頭矢野が左前打。赤星は遊ゴロも、併殺崩れで一塁に生き、そこから足で魅せた。続く藤本の打席だ。いきなり4連続けん制を受けたが、初球に二盗成功。1死二塁となり、日本ハム外野陣は浅く守らざるを得なくなった。藤本の一打は、こんな状況で生まれた。
この日はナイター明けのデーゲーム。先発の左腕・藤井対策に加え、疲労も考慮されてスタメンを外れた赤星。ゲーム後は無言だったが、ここ1番で勝利に貢献するのはさすがだった。
これで、昨季から続く交流戦日本ハム戦の連敗も「5」でストップ。層の厚さを見せつけた猛虎が、再び波に乗った。【佐井陽介】



