<日本ハム4-5阪神>◇1日◇札幌ドーム

 見慣れぬ光景に、球場が騒然となった。藤川の制球が定まらない。延長10回裏に3四死球を与え、2死満塁のピンチを迎えると、6番スレッジにこの回2度目のストレートの四球。指先を離れたボールはまるで暴れ馬のようだった。先発登板した02年7月以来、6年ぶりの押し出し四球。リリーフでブレークした05年以降は初めてだ。1イニング4四死球も入団後、経験なし。最後は飯山を一邪飛に抑え、18セーブ目を記録したが、まさかの展開に苦笑いでロッカールームに引き揚げた。

 2点リードで守護神登場は疑いようのない必勝パターンだが、この日は違った。藤川はこれまで24試合でたった3四球と制球にも自信をもつ。異変の原因は「鬼門」にあるのか。交流戦の始まった05年から、札幌ドームでは前日まで3勝6敗と負け越している。8回からマウンドに上がったウィリアムスが代弁した。「このドームはすごく難しい。湿気がないから。ボールが滑るんだ。(藤川も)同じ理由かもしれない」。火の玉と呼ばれる直球は指先の強烈なスピンから生まれる。ボールに適度な湿り気がなければ、滑って制御しづらくなる可能性はある。先頭打者の村田も含め、2度もストレートの四球を与えるのは、ありえないこと。それでもバッテリーを組む矢野は「球児もロボットじゃない。最後はきっちり抑えたし、引きずることも心配することもない」と一時的なものととらえた。

 藤川は自身の投球には触れなかった。「高橋さんのことが心配」。死球で退場させてしまった相手を気づかった。この1試合で調子を語るのは、早計か。球自体は切れ味があった。札幌ドームはやはり猛虎に厳しかったが、シーズンで再び戦うことはない。最後の最後でヒヤリとしたが、鬼門を突破したことが何よりも大きい。【田口真一郎】