<広島4-5横浜>◇16日◇マツダスタジアム

 4時間15分の死闘を制した瞬間、三塁側ベンチの横浜田代富雄監督代行(55)は大きく口を開けて喜びを爆発させた。7投手の継投で07年6月以来の5連勝を決め「とにかく、みんながようやった。その一言に尽きる」と野太い声を出す。5位阪神に3・5ゲーム差と、1年半抜け出せない最下位からの脱出は遠いモノではなくなった。

 非情な采配があった。1点リードの9回、守護神の山口が乱れる。先頭の栗原に二塁打を浴び、続くマクレーンに四球。1死一、三塁となり、田代代行が動く。「迷わない。石井にしろ(加藤)康介にしろ木塚にしろ、みんなよう頑張っているから」と、交代を即決。結果的には石井がスクイズを決められ延長に入ったが、ブルペンの力を信じていた。

 木塚が、工藤が、真田が踏ん張った。10回2死一、三塁で登板した真田は言う。「石井さん、工藤さん、キヅさん(木塚)がつないできたことを台無しにしたくなかった。必死のパッチでやりました」。後輩の山口がマウンドに残した悔しい思いさえもムダにする気はなかった。

 非情に見える交代にも、指揮官の愛があった。山口に「代えられたことをどう思うか。どう次につなげるか。悔しさを次につなげないと」と真剣な表情を見せた。17日からは中日、巨人と上位チームに激突する。22歳の若きストッパーの躍動がなければ、重い扉は開かない。泥くさくつないで勝った白星が、チームと山口を進化させたに違いない。【今井貴久】

 [2009年7月17日9時8分

 紙面から]ソーシャルブックマーク