<横浜2-0中日>◇5日◇ハードオフ新潟

 先発メンバー表(打順表)の記入ミスが大記録を生んだ。横浜スティーブン・ランドルフ投手(35)が、1回1死から登板し、ゲームセットまで8回2/3を投げてわずか2安打、毎回15奪三振の“完封”勝利を挙げた。横浜が先発投手に6日先発予定のグリンと書いてしまったため、グリンは急きょマウンドに上がり打者1人を打ちとって交代。引き継いだランドルフは救援投手初の毎回奪三振、外国人投手最多の15奪三振など記録オンパレードの快投となった。

 最後の打者、代打立浪をこん身の147キロで空振り三振に仕留めると、ランドルフはクルリと回ってガッツポーズを決めた。15奪三振、わずか2安打で26のアウトを積み重ねる“完封劇”。試合後は白い歯を見せ「どんな状況でも与えられた環境でベストを尽くすだけだ。誰も傷つけることなく試合を完了させられてうれしい」と会心の2勝目を喜んだ。1回1死、2番打者の荒木からマウンドに上がったハプニングを力ずくで乗り越えた。

 試合前の予期せぬ場内アナウンスに、横浜ベンチが騒然となった。「先発ピッチャー、グリン」。田代富雄監督代行(55)は肩をズルリと落とし、みけんのめがねを押し上げてスコアボードを凝視した。試合前に同代行がマネジャーに手渡したメモには、「投手ランドルフ」の名を書き込んでいた。関係者がメンバー表に投手名を記入する際に「グリン」と名が書き間違えられた。

 6日の先発予定で、この日は非番だったグリンはロッカー室でのんびり食事をしていた。「何が起こったか最初は分からなかった」という杉本投手コーチも、急きょ打者1人だけの登板をグリンにたどたどしく伝えたという。グリンは準備もほとんどなしでマウンドに上がったが、無事に先頭井端を三塁ゴロに仕留めて笑いながら交代。準備万端ランドルフは、そこから「アクシデントの悪い流れを止めたかった。この試合を絶対落としてはいけないと思って投げた」と気合を入れた。

 常時140キロ台後半を計測する直球に、チェンジアップ、スライダーを交えてベース上で果敢に勝負した。「中日には危険な打者がたくさん。緊張感がいい結果につながった」と振り返った。1回2者三振から始まり、毎回三振を積み重ね、9回にも2奪三振。リリーフ投手史上初の毎回奪三振だ。26アウト中、三振15でゴロアウトは2つだけ。9つのアウトをフライで打ち取るほどボールが伸びていた。

 試合後の田代監督代行はランドルフに直接あやまり「おれのミスを選手がカバーしてくれた。ランドルフが攻撃的な投球をみせてくれた」と絶賛した。横浜ベンチが冷や汗をかいた一戦を、頼もしい左腕が救い、記録ずくめの試合に変えた。【山内崇章】

 [2009年9月6日11時19分

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