<横浜6-3オリックス>◇14日◇横浜

 横浜が勝った。尾花高夫監督(52)が就任9試合目で初白星を手にした。前日まで新人監督のワースト記録を更新する開幕8試合勝利なし(6敗2分け)と苦しんでいたが、この日のオリックス戦ではエース三浦大輔投手(36)が勝ち投手となり、4番の村田修一内野手(29)が先制3ラン。守護神のクリス・ブーチェック投手(31)がセーブを挙げる理想的な展開で、シーズンに向けて明るい兆しがようやく見えてきた。

 差し出されたボールに、尾花監督は手を伸ばさなかった。「別に今ごろウイニングボールをもらってどうするの」とぼそり。9試合目にしてようやく勝てたという安堵(あんど)感も、素直な喜びも、封印したかのように無表情で記者の質問に答えた。「初勝利?

 みなさんが騒ぐほど気にしてません」。オープン戦の1勝に一喜一憂していては恥ずかしいと感じたのか、必要以上に感情を押し殺しているようにさえ見えた。

 実際には、なりふり構わず勝ちにいっていた。内川の打順をシーズン中で予定している3番から1番に移し、当たっているカスティーヨを3番に入れた。島田ヘッドコーチは試合前に「2月に初めて選手を見て、これまでは動きを見てきた。でもこれからは勝ちに行くゲームをしなくてはいけない。首脳陣もそうだけど、選手が不安になる」と話していた。この日のテーマは、今までのような「調整」ではなく、「勝利」だった。投手も7人をつぎ込んだ。相手の代打に対応して高宮を1人で交代させるなど、きめ細かく動いた。

 前日の甲子園での試合後、尾花監督は「個人としての調整も大事だけど、どういうふうに勝つかというチームとしての調整もしてくれ」と、勝利への意識を強く持つよう伝えていた。その思いが選手に浸透していたのを見て取ると「気持ちが前に出ていた」と褒めた。

 この日の試合後は、みっちり2時間かけて対戦チームの分析を行った。セ・リーグ5球団と新戦力について1日ずつ、これから6日間集中講義でシーズンに備える予定。不名誉な連敗記録から抜け出した横浜ナインは、シーズンでの汚名返上に向けて、ペンとノートを手に、牙をといでいた。【竹内智信】

 [2010年3月15日8時34分

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