<日本ハム3-5ソフトバンク>◇20日◇札幌ドーム

 プロ野球はパ・リーグが開幕し、3球場合計で10万人あまりのファンが駆けつけた。注目の日本ハムのエース・ダルビッシュ有投手(23)はソフトバンク戦(札幌ドーム)で13奪三振の力投を見せたが、7安打5失点で開幕戦2年連続の完投黒星を喫した。13三振以上の開幕投手ではプロ野球史上初の敗戦投手になった。ロッテ成瀬善久投手(24)、楽天岩隈久志投手(28)も完投負け。開幕戦3投手の完投負けは51年に次いでリーグ2度目と、波乱の幕開けとなった。セ・リーグは26日に開幕する。

 開幕戦球団新となる13三振をマークしても、ダルビッシュの最大の願いはかなわなかった。白星へとつながらなかった147球の激闘の軌跡を、クレバーに自己分析した。「点を与えるタイミングが典型的な負け投手だった。冷静に意識していれば、確実に5点は取られていなかった」。無念さを隠し、淡々と現実を受け止めた。

 立ち上がりからトップギアに入ったが、小休止を繰り返した。初回に2三振で3者凡退。オーティズの決め球は新球ワンシーム。146キロの高速で真ん中低めへ沈ませ、空振り三振を奪った。しかし、落とし穴は2回だった。先頭の小久保に詰まりながら中前へ運ばれ、続く多村に連打を許した。1死二、三塁から一塁手高橋がゴロをはじく痛恨のタイムリーエラー。続く松田の遊ゴロで2失点した。不運もあった劣勢を最後まではね返せなかった。

 3回には小久保にワンシームを左前適時打された。「うまいこと打たれました」と潔く振り返った。5回には、また小久保にカーブを中越え二塁打され、追加点を与えた。相手エース杉内との我慢比べの展開で先制、中押し、ダメ押しと要所で失点。梨田監督が「1つのミスで2点を取られたのは痛かった。あのエラーがね」と悔いたが、ダルビッシュは「野手の方のミスは自分がカバーしないといけない」とエースらしく責任を一身に背負った。

 開幕戦4年連続完投は「鉄腕」故稲尾氏と並んでリーグ歴代2位タイ。投手分業制が確立している現代野球では驚異的だ。13三振以上を奪った投手では、史上初の黒星。最終9回には交代を打診されたが、志願の続投。田上に右犠飛で致命的な1点を許した。「結局、点を取られたので迷惑をかけてしまった」と反省した。

 対策を立ててきたソフトバンク打線は、オープン戦でテストした新球を徹底的に見極めてきた。中盤以降からチェンジアップを取り入れ、緩急を生かした配球へ転換。打線の反撃リズムを呼んで、6回には中田のプロ初の2点適時打で追い上げたが、白星には届かなかった。「あいつもよく打った。あれで盛り上がったんですけれどね」と、後輩の節目を飾れなかったことも嘆いた。

 プロ入り6年目の開幕は春の珍事のような“敢闘負け”。新球について「完ぺき。(現在の球種で)一番いいんじゃないのかな。最初はいいんで」。今後はまた新たな対策、スタイルを模索していくことを示唆した。結果的にはスタートでつまずいたが、これも進化への1歩となる。【高山通史】

 [2010年3月21日9時8分

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