<阪神6-1ヤクルト>◇6日◇倉敷

 あっぱれ、スタン!

 阪神ジェイソン・スタンリッジ投手(31)が、03年ムーア以来、7年ぶりの虎助っ投完投勝利を挙げた。ヤクルトを相手に完封ペースだったが、9回に1失点。それでも145球の熱投で4連勝(今季5勝目)をマークした。7回には来日初安打も放ち、マートンの投ゴロの間に泥だらけになって生還。450発の花火も打ち上がった倉敷の夜、スタンリッジもまぶしく輝いた。

 ムシムシした夏の夜。夜王スタンリッジのオーラは倉敷の虫までも引き寄せた。7回表が始まる直前。助っ人右腕の口の中に虫が飛び込んできた。「おいしくなかったんで、口から出したよ」。慌てて通訳がタオルと水を持ってマウンドまで駆け寄り、すぐさまうがいを敢行。これには、ブラゼルも必死に笑いをこらえた。そんな“アクシデント”にもめげず、最後までマウンドに立ち続けた。

 初回は1死満塁、2回は1死一、二塁、3回は1死三塁。何度も土俵際まで押し込まれながら、耐えた。150キロに迫る直球に変化球の制球も上々。ストライク先行の投球を続け、打線の援護を呼び込んだ。8回裏には先頭代打金本の打順で勢い余って打席に向かう場面も。やる気みなぎる“フライング”は愛嬌(あいきょう)だ。9回に初失点したが、145球で10安打を浴びながら8奪三振1失点。ソフトバンク時代も含めて来日初、阪神外国人投手では03年5月5日ヤクルト戦(甲子園)でムーアが完封して以来、7年ぶりの完投勝利を記録した。

 大量の新聞紙に家族への愛を込める。1軍昇格前から、登板翌日は鳴尾浜・虎風荘のスポーツ新聞を何度も譲り受けた。米国時代からのルーティンワークだという。「自分の写真が載っている新聞はずっと集めているんだ。ソフトバンク時代もそうしていたよ。やっぱり家族に見てもらいたいしね」。米国アラバマ州の実家には大量の新聞を保管。長男キャッシュ君が大きくなった時、父の姿を紙面で確認できるようにしている。東京遠征中だった先週土曜日の午前中にはジョイ夫人とキャッシュ君、夫人の両親を連れて渋谷、六本木を散策。「スクランブル交差点を見せてあげたんだ」。家族サービスを心から楽しみ、快投につなげている。

 「かなり疲れたけど、完投より初ヒットの方がうれしかった。やっと野球選手になれた気がするよ」。2点リードの7回には先頭で右前打も放ち、この回4得点の猛攻も導いた。実はこれ、米国マイナー、メジャー時代を通じてプロ初安打。試合後は「初ヒットに31年間かかったよ」と冗談交じりに照れ笑いした。

 自身4連勝で5勝目。ナイター先発7試合で無傷の5連勝となり“夜王”の称号も板についてきた。走塁の際に泥んこになったユニホームが誇らしい。「倉敷の球場が大好きになったよ」。球場の照明、無数のフラッシュに照らされ、端正なルックスの輝きが増した。【佐井陽介】

 [2010年7月7日11時42分

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