<阪神1-10中日>◇8日◇スカイマーク

 眠っていた打線が、目覚めた!?

 中日が首位阪神に大勝して70勝一番乗り、再び0・5ゲーム差に詰め寄った。1回に打者一巡の猛攻で5点を先制。2回に頭部死球を受けた森野将彦内野手(32)が4回には後遺症を感じさせない、ダメ押し19号2ランを放った。7日、落合監督から「144試合寝っぱなしか」と酷評された打線が14安打10点。9日の首位攻防第3ラウンドで一気に首位を奪いにいく。

 まさに不死身弾だった。4点リードの4回1死二塁、森野が西村の変化球に思い切り踏み込んで、振り切った。「甘い球を仕留められた」と、高々と上がった打球は右翼席へ吸い込まれた。リードを6点に広げる、ダメ押しの一打だったが、ただの1発ではなかった。2回の第2打席。メッセンジャーの速球が後頭部付近を直撃した。「ガツンッ」。ボールとヘルメットの衝突音に球場が静まりかえった。もんどり打って倒れ、あおむけのまましばらく動けなかった。ベンチから落合監督まで出てきた。最悪の事態も想定された。

 だが、数分後ゆっくり立ち上がると、1度はベンチへ戻ったが、すぐに出てきて一塁へと歩いた。「交代?

 いや、そういうことは言いません」と平然としていた。最悪なら野球生命にかかわるような死球だったが、気迫が体を動かした。

 阪神金本を思い起こさせる「鉄人」ぶりだ。08年5月7日、金本は木佐貫の直球を頭部に受け、治療を受けながら出場し、次打席では見事な1発を放っていた。頭部死球を受け、懸念されるのは打撃への後遺症。腰がひけるどころか、踏み込んでいき、最高の結果を出した。「やり返す?

 そういう意識は特にない。とにかく勝てて良かった」と事もなげに言った。

 目覚めたのは森野だけではない。1回。荒木が初球攻撃で出塁し、次打者の初球で二盗。わずか2球でのチャンスメークに荒木は「初球からの指示?

 どうかな~。初球から打ったことがそういう流れになったかもしれない」とぼかしたが、チームが触発された。5点を先制した1回の波状攻撃につながった。

 やるしかなかった。完封負けした7日、落合監督は「バッテリーだけ頑張っても野手が取れなければこういう試合になるだろうな。そろそろ目覚めてもいいんじゃないか。144試合寝っぱなしか?」とハッパをかけた。口調こそ穏やかだが、その怒りは沸点に達していた。指揮官のゲキに打線が結果で応えた。

 首位阪神とは再び0・5ゲーム差。落合監督は「目覚めたというか、もらった点数だろ」と満足はしていない。

 [2010年9月9日9時24分

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