<オープン戦:中日1-6ヤクルト>◇8日◇刈谷

 広角1号だ!

 中日の新外国人ジョエル・グスマン外野手(26=オリオールズ2A)が、ヤクルトとのオープン戦で右翼に1号本塁打を放った。圧倒的な飛距離に注目が集まるが、対外試合で放った本塁打4本中3本が中堅から右方向。広角に打ち分ける器用な打撃で、竜打線の核になる。

 待望のオープン戦1号は、魅力たっぷりだった。飛距離は並の110メートル。ただ、打球方向に大きな意味があった。身長196センチの右打者グスマンは、打球の飛距離が落ちるはずの右方向にアーチをかけた。

 4回1死走者なし。ヤクルト・バーネットの初球、外に逃げる変化球をバリー・ボンズモデルの長尺バットでとらえた。引っ張れば、引っかけて内野ゴロになりそうなボールだった。

 「前の打席で三振したボールを、うまく呼び込んで打つことができた」。

 2回の第1打席は2ボール2ストライクからの7球目を見逃し三振。この7球の“予習”を生かす頭脳的な一撃だった。

 オープン戦1号だが、2月の沖縄・北谷キャンプ中の練習試合では韓国チーム相手に3戦連発と爆発している。この3本は右越え、右中間、中堅左と2本が中堅から右方向だった。この日の1発も合わせ、対外試合で放った4発のうち3発が「右方向」。押し込まれても本塁打にできるパワーもあるが、意識して逆らわず右に持っていくのが強み。オープン戦で10安打を放っているが、7割が中堅より右。そんな結果を裏付けるように、こう言った。

 「まずはボールを良く見てバットをボールに当てることを考えている。ストライクなら、コースに応じてスイングが変わってくる。外なら右方向、内側なら引っ張るといった具合だね」。

 長距離打者を大けがせずに封じるセオリーは外角攻め。ただ、グスマンは今のところこれを苦手にしていない。軽々と安打、いや本塁打にできるのだから、相手にしたらたまらない。右へ、左へ。フィールドの90度すべてを使うことができる広角打法だ。

 ブランコも調子を上げてきたが「5番はオレ」とばかりに連日の猛アピールに成功。未知数の右翼守備も、2回に平凡な飛球をキッチリと捕球し無難にこなした。現役時代の落合監督の代名詞だった「広角打法」。時を超えG砲が、再びそれを中日の武器としてくれそうだ。【八反誠】