<オープン戦:ソフトバンク0-3巨人>◇9日◇福岡ヤフードーム

 巨人坂本勇人内野手(22)が、原監督が命名した「近未来打線」の3番打者に大きく前進するオープン戦第1号を放った。8回2死一塁、ソフトバンク4番手デレオンの直球を左翼席に運んだ。09、10年と2年続けて不動のリードオフマンとして活躍し、さらなるレベルアップに挑む5年目の今季。公式戦では過去経験のない3番として、V奪回に挑む11年の巨人打線をけん引するに違いない。

 「巨人の3番」にふさわしい、しなやかな、鋭い体の回転だった。8回、2死一塁。ここまで4試合連続無安打だった坂本が、ソフトバンク・デレオンの直球を迷いなく振り抜いた。「自分のスイングをしようと思っていた。きれいに体重移動ができて、うまくバットに乗せられた」。勝利をたぐり寄せる貴重な2ランに「ちゃんと芯に当たったので、思ったより打球が伸びました」と、安堵(あんど)感を漂わせつつほおを緩めた。

 変化を恐れず、さらなる高みを目指している。昨季31本塁打を放ったが「いろんなことを考えながらやっています」。打つポイントを体に近づけたり、打ちにいく始動を速くしたり、足の上げ方、タイミング…とレベルアップに余念がない。好成績の翌年に形を変えることは怖くないのか-。そう問われても、すがすがしい表情でこう答えた。「変えるのは勇気がいることですが、それは当たり前のことですから」。常に成長を求める姿勢を示した。この夜のアーチが、模索の1つの答えだった。

 打撃の形だけでなく、スパイクにも変化があった。アディダス社の担当者によると、前日8日から使用する新スパイクは、歯の形やサイズは同じだが、甲部分の縫い目などを少なくして、フィット感をアップさせたもの。重量も昨年の約310グラムから300グラム以下に軽量化。キャンプでは昨年モデルを使用したが、開幕まで3週間を切ったこのタイミングで新調した。向上への一念だった。

 ただ、チームの勝利を追求する心構えだけは不変だ。原監督が命名した「近未来打線」の3番として、この日も先発起用された。それでも「打順はあんまり意識していません」と、自分の積極性や長打力などを、チームの勝利のために生かすことだけを考えている。だからこそ「1本だけだったので。2打席見逃し三振をしていますし。シーズンに入ったら(3番も)あるかもしれないけど、今のままじゃだめ。確率のいい打撃をしていかないといけない」。反省の弁が出たのも、貪欲さの表れだ。

 「近未来打線」の鍵を握る1番長野に続き、3番坂本にも1発が飛び出した。「結果が出たのはホッとしています。1本出てくれたので、イメージを大事にして、調子が上がっていけばと思う」。25日の横浜との開幕戦まで、残り9試合。坂本の一振りが、巨人の「近未来打線」を完成型へと近づけた。【浜本卓也】