<ヤクルト1-0中日>◇20日◇神宮
ヤクルト由規投手(21)が、自身2度目の完封で今季初勝利を挙げた。初回、1死から3連続四球で背負った満塁のピンチを併殺打で切り抜けた。2回以降は勢いのある直球を軸に中日打線を3安打に抑えた。ヤクルトは9回無死一、二塁から投前犠打と悪送球で決勝点を挙げて今季初のサヨナラ勝ち。3連勝とし、勝率を5割に戻した。
無人の三塁ファウルゾーンに、ボールが転々と転がっていく。二塁走者、福地がかえり、サヨナラだ。まさかの幕切れに、誰よりもヒーロー由規が驚いていた。9回を3安打無失点で投げ切り、味方の反撃を信じて待った。9回裏無死一、二塁、代打三輪の投前バントを、中日河原がベースカバーのいない三塁に投げた。「次の回もいくという気持ちでした。一瞬何が起きたのか分からなかった」。歓喜の輪に包まれて、ようやく勝利を実感した。
最速は155キロ。苦しんだ立ち上がりは、ピンチの場面で投球ギアを1段階上げた。
1回1死から3者連続四球で満塁としたが「開き直ろうと思った」。それまで140キロ台中盤だったが、腕を振り、5番ブランコに対して、3球連続の154キロでカウント1ボール2ストライクと追い込む。最後は再び154キロでバットをへし折り、二塁ゴロ併殺打に打ち取った。
今キャンプでテーマにしてきたツーシームは、この日は投げていない。「まずはしっかり、真っすぐのトップの位置を固めてから」と原点に返った。カウントを悪くしても、置きにいかずに、腕を振って直球を投げる。3回までに61球を擁したが、徐々にペースアップ。9回の119球目が154キロと、スタミナ面でも成長した。
この日は、仙台市内から両親が車に乗って日帰りで駆け付けた。由規にメールが届いたのは、試合当日の練習が終わったころだった。「急に、来てますって」と驚いた。余震の度に両親には連絡する日々。「こっちは大丈夫だから、野球に集中するように」と逆に励まされてきた。往復700キロ以上の道のりで駆け付けた2人に、勝利が何よりの感謝だった。
今年から愛用するバッグには、戦国時代の英雄、伊達政宗の刺しゅうを入れた。天下を目指した「独眼竜」は宮城の雄だった。由規の完封は、昨年8月5日の中日戦以来、2度目。「1勝目をこういう形で勝ててうれしいけど、これで終わりじゃない。1つでも多くの勝利を届けたい」。それが、育ててくれた地元への恩返しと信じている。【前田祐輔】



