<セCSファーストステージ:ヤクルト2-6巨人>◇第2戦◇30日◇神宮
崖っぷちの一戦で巨人の頼れるベテランが存在感を発揮した。4回、阿部慎之助捕手(32)が均衡を破る先制本塁打を放ち、1点リードの9回には右前打で4得点の口火を切った。9回2死満塁から、代打で登場した高橋由伸外野手(36)は試合を決定付ける3点二塁打。ファイナルステージ(11月2日開幕)への進出が懸かる今日の第3戦に向けて勢いを付けた。
神宮の夜空に舞い上がった打球が、巨人の下克上日本一という物語の幕を開けた。4回2死。4番阿部はヤクルト石川の直球を「イメージ通りのスイング」で右中間に高々と運び、スタンドに放り込んだ。チームは前日の初戦を2得点で惜敗し、この日もここまで1安打。「先制点が大事だと思っていた。先制打を打てて良かった」。4番の1発が、仲間を勇気づけた。
9月23日阪神戦から4番に座り、4番、主将、捕手と“1人三役”をこなす。リーグ戦では最終戦までの22試合で4番を務め打率3割6分3厘をマークし、チームも7つ勝ち越した。「自分が打たないと負ける」。もちろん、想像以上の重圧はかかった。だが、阿部には「プレッシャーが掛かった方がいいんだよね」と受け止めて力に変えられる強さがある。「眠れなかったこと」を聞かれ「ない」とにやり。試合前ミーティングでは「もう少し長く、野球をやろう」と呼びかけた。負ければCS敗退が決定してしまう決戦を前に、主将として、硬くなりがちな仲間の気持ちをほぐしつつ士気を高め、自らは先制ソロを含む3安打。一発勝負のCSでも、頼もしさは変わらなかった。
頼もしい男は、他にもいる。2-1の9回2死満塁で、高橋由が代打で登場した。マウンドには、ヤクルトの守護神・林昌勇。どうしても追加点が欲しいところで「打つしかないと思っていた」。2球目直球を強振すると、走者一掃の適時二塁打に。試合を決定づけただけでなく、相手の心も折った。今季は2度のサヨナラ打を放つなど勝負強さは健在。原監督も「最後の由伸のタイムリーが出るまでは分からなかったよ」と称賛。それでも高橋由は「いいところで打たせてもらっただけで、(好機を)つくってくれたのはみんなだから。期待に応えられて良かった」とさらりと言うところが、何とも頼もしい。
阿部に始まり、由伸が締めて、今日につながった。その最終決戦に向け、高橋由は「もう1つ何とか勝って、次にいければ」と力を込めた。「自分たちが当たり前のことをできるかどうか」と阿部。勝利の余韻に浸りすぎることなく、次を見据えて切り替えられる2人の頼れるリーダーの存在が、巨人を土俵際から救っていく。【浜本卓也】



