必殺時間差タッチアップだ!

 阪神和田豊監督(49)が13日、年に1度あるか、ないかのプレーに対して“特訓”を行った。設定された状況は1死一、三塁。一塁と右翼手の間にフライが上がる。ここで一塁走者がタッチアップのスタートを切り、右翼手(一塁手)の二塁送球を誘う。その間に三塁走者が時間差でタッチアップして、本塁を陥れるというプレーだ。

 「あれは前もってやるプレー。あそこにフライを打とうと思っても打てないけど、やっておくと上がった時にどうすればいいか反応できる。1点を取りに行くということ。あのプレーで勝てるかもしれない。1年に1回も起こらない可能性もあるけど、もちろん、あれで負ける場合もある」

 ひょっとしたら、シーズンに1度も起こらないかもしれない。それでも、いくつもの複雑な状況判断が求められるプレーをいかに活用し、いかに防ぐか。投手も野手もほとんど全員が参加した“特訓”は、1時間以上も続いた。「ノーヒットで1点」を合言葉にしている和田野球ならではの、周到な準備だった。

 「野手だけでなく、投手も含めてできた。こういうことはキャンプしかできないから。実際に、あのプレーで(勝ち星を)取るのと、落とすのではえらい違い。2勝分、違うから」

 あの1球、あの1点、あの1勝で優勝が左右されるかも知れない。その時に笑う側でいるために。和田イズム満載の緻密な練習だった。【鈴木忠平】