さあ開幕スタメンだ!

 プロ野球は29日、セ、パ両リーグが同時開幕し、ナイター6試合が行われる。日本ハムの二刀流ルーキー大谷翔平投手(18=花巻東)は西武戦(西武ドーム)に「8番右翼」で先発出場が濃厚となった。1軍の前日練習には不参加で、再検討を示唆していた栗山英樹監督(51)が決断した。今後はいったん「投手・大谷」を封印。「打者・大谷」に専念し、開幕ダッシュを目指すチームにバットで貢献する。

 午後5時45分。イースタン・リーグ西武戦の登板を終えた大谷は、バットケースを抱えて1軍宿舎(東京・立川)へと向かった。27日の同リーグが雨天中止となり、スライド登板した影響から開幕前日練習に参加できなかった。同時刻の2軍マウンドに上がっていた大物ルーキーを、それでも栗山監督は「8番右翼」でスタメン起用する方針を固めた。

 大谷

 楽しみですけど、公式戦なので勝てるように。準備をしっかりして、勝ちに貢献できるようにしたいです。自分の出せるものをしっかり出せればいいです。(投手とは)切り替えて、打撃や守備をしたいです。

 高卒新人の開幕スタメンとなれば、東映時代の59年張本以来、球団史上54年ぶり2人目の快挙となる。「エース兼4番」という異次元を目指す18歳が、まずは打者として歴史的な1歩を踏み出す。

 チームメートが開幕戦の舞台・西武ドームで汗を流しているころ、大谷は2軍施設・鎌ケ谷のマウンドにいた。登板日はフリー打撃を回避するという球団方針の通り、大一番を前にしてもバットを振らなかった。守備についても、西武ドームは未経験で、右翼のクッションボールの処理なども確認できていない。だが、栗山監督は近い将来、球団を背負って立つ大物ルーキーにふさわしい門出を用意する。「開幕戦でチームに大きなうねりを起こしたい」という構想通り、大谷の抜てきに踏み切った。

 対戦相手の西武は、入団6年で5度の2ケタ勝利を挙げている岸が先発。「ストレートのキレもあるし、緩急もある。(攻め方が)カウントによっても違うと思うので、データを見たい」と大谷。実際にボールを打つ練習ができなくても、イメージトレーニングには余念がない。難しい調整になるが、二刀流に挑戦すると決めたときから覚悟していた。「スイングができれば一番いいけど、バットを握るだけでも違うと思う」と、宿舎の部屋では常にバットを手元に置き、戦いの舞台へと備えるつもりだ。

 開幕ダッシュを狙うチームの歯車となるため、いったんは「投手・大谷」を封印する。次回は4月9日からのイースタン・リーグ、ロッテ3連戦(ロッテ浦和)で登板する予定だ。間隔を2週間空け、まずは野手として1軍のサイクルに慣れる。「監督さんに『行ってほしい』、『打ってほしい』と言われたときに結果を出せるようにしたい」。前人未到の二刀流ストーリーが、華やかに幕を開ける。【本間翼】